1996 Fiscal Year Annual Research Report
カルシウム代謝異常病態における細胞膜カルシウム受容体の機能変化の解析
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08671139
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
五十嵐 徹也 東京大学, 医学部・附属病院(分), 助教授 (00134601)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中林 幹雄 東京大学, 医学部・附属病院(分), 医員
西森 茂樹 東京大学, 医学部・附属病院(分), 医員
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Keywords | カルシウム / カルシウム受容体 / 副甲状腺ホルモン / 心房性ナトリウム利尿ホルモン / 慢性腎不全 |
Research Abstract |
細胞内のカルシウム(Ca)による遺伝子の発現調節、物理的刺激Caによる遺伝子発現調節との関連、ヒト副甲状腺ホルモン(PTH)遺伝子上に存在する抑制性Ca反応性エレメント(negative Ca-responsive element、nCaRE)、これに特異的に結合する核蛋白の同定といった一連の基礎検討をふまえ、おそらく細胞膜Ca受容体を介すると考えられる遺伝子調節系の生理機能を臨床レベルで検討することが本研究計画の主目的であった。その第一歩として平成8年度には、(1)Ca負荷テストによるCa受容体機能の臨床的解析を行い、さらに(2)近年開発されたCa受容体アゴニストのわが国での臨床治療と、各種疾患への臨床応用についての準備研究を進めた。また(3)慢性腎不全による二次性副甲状腺機能亢進症の病態分析についても若干の知見が得られつつある。 (1)Ca負荷テストによるCa受容体機能の解析:ANP遺伝子の5′上流には細胞外CaによるヒトPTH遺伝子の転写抑制に関与するDNAエレメントが存在し、ラットのin vivo灌流実験で心臓でのANP mRNA発現量が細胞外Caにより負の調節を受けることを報告してきた。その分泌については細胞外Caによって負けの調節を受けることが知られているが、本年度の計画では、まずヒトでもこれが確認できるか、またこの分泌抑制が副甲状腺細胞膜上のCa受容体を介する系によるのかを検討することとした。家族性低Ca尿性高Ca血症(FHH)の患者、特発性及び手術後の副甲状腺機能低下症の患者、コントロール正常者それぞれにCaを経静脈的に負荷し、経時的に血清Ca濃度、血漿レニン活性などの細胞外液量の指標となるパラメーターとともに血漿ANP濃度を測定した。その結果すべての群で細胞外Caの上昇に伴い血漿ANP濃度の低下が認められ、FHH群ではPTH分泌と同様に、血中CaによるANP分泌の調節セットポイントが異なっていることが判明し、細胞外Ca受容体が関与する可能性が示唆された(97年度日本内分泌学会発表予定)。また、血球成分からは、有核細胞部分より核蛋白を抽出しnCaREをプローブとしたEMSA(Electrophoretic Mobility Shift Assay,ゲルシフト法)による解析を、また総RNAを抽出しRT-PCR法によりCa受容体、ref1、Ku抗原mRNAの検出を進めており、Ca感受機構とその機能変化をより詳細に解明することができると期待している。 (2)Ca受容体アゴニストに関する臨床研究:Ca受容体アゴニスト(KRN568)の第1相試験がわが国でも進行中であるが、これを用いた各種Ca代謝異常疾患の適応、治療量・効果等の判定基準に関する臨床的研究を関連施設と協力して進めている。これは平成9年夏には実用レベルの段階にいたるものと考えられる。 (3)慢性腎不全による二次性副甲状腺機能亢進症の病態解析:(1)と同様の負荷試験によりCaによる調節セットポイントに関する生理的臨床研究を行っており、現在データの解析中である。慢性腎不全は骨代謝のみならずきわめて広範な全身組織の異常を伴うが、この臨床研究の過程でこれらにCa受容系の機能異常とPTHの過分泌が間接的に他組織を介して大きく関わるという知見を得つつあり、この研究を進めているところである。摘出副甲状腺を用いたRNAと核蛋白の解析については準備中である。
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Research Products
(1 results)