1997 Fiscal Year Annual Research Report
動脈硬化に伴う石灰化におけるオステオポンチンの意義に関する研究
Project/Area Number |
08671177
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
西沢 良記 大阪市立大学, 医学部, 助教授 (00128745)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塩井 淳 大阪市立大学, 医学部, 助手 (90260801)
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Keywords | 血管石灰化 / オステオポンチン / 血管平滑筋細胞 / 無機リン / リン輸送体 |
Research Abstract |
平成8年度の研究でオステオポンチン(OPN)が血管石灰化に対して促進的に作用することおよび細胞外無機リンによるOPN遺伝子の発現調節機序に細胞内へのリン輸送が関与していることを証明した。平成9年度は、細胞外無機リン濃度の上昇によるOPN遺伝子の発現調節機序に関してさらに詳しく検討した。 細胞外無機リン濃度の上昇によるOPN遺伝子の誘導に転写活性の上昇が関与しているかどうかについてnuclearrun-onassayにより検討したところ、細胞外リン濃度の上昇によりOPN遺伝子の転写は約2倍に上昇した。また、このOPN遺伝子の誘導にmRNAの安定性の増加が関与しているかどうかをactinomycin Dを用いて検討したところ、細胞外リン濃度の上昇はOPNmRNAの安定性に影響を及ぼさなかった。したがって、細胞外リン濃度の上昇によるOPN遺伝子の誘導は主としてOPN遺伝子の転写活性を増加させることによると考えられた。 また、細胞外リン濃度の上昇のOPN蛋白の発現に及ぼす影響についてImmunoblot法を用いて検討したところ、細胞外リン濃度の上昇はウシ大動脈由来血管平滑筋細胞(BVSMC)におけるOPN蛋白の発現を濃度依存的に増加させた。したがって、細胞外リン濃度の上昇はOPN遺伝子と共にその蛋白の発現も増加させることが確認された。 最後に、細胞外リン濃度の上昇による石灰化促進作用に細胞内への無機リン輸送が関与しているかどうかについて検討した。細胞外リン濃度を0.125-2.0mMまで変化させたところ、濃度依存的に細胞内へのリン輸送は増加すると共にBVSMCの石灰化も増加した。 リン輸送体の阻害剤であるphosphonoformic acid (PFA)およびarsenateが、用量依存的にリン輸送を阻害することは平成8年度に報告したが、1mM PFAおよびarsenateのBVSMCによる石灰化に対する影響を検討したところ、細胞外無機リン濃度の上昇により増加した石灰化は、PFA添加によりコントロールレベルまで低下した。 以上のことから、細胞外無機リン濃度の上昇は細胞内への無機リンの輸送を介してOPN遺伝子の誘導を転写レベルで調節すると共に石灰化も調節していることが明らかにされた。
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