1997 Fiscal Year Annual Research Report
糸球体硬化促進遺伝子の同定と、その機能および発現調節機構の解明
Project/Area Number |
08671278
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
荒川 正明 新潟大学, 医学部, 教授 (80069012)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上野 光博 新潟大学, 医学部・附属病院, 助手 (90260546)
成田 一衛 新潟大学, 医学部, 助手 (20272817)
西 慎一 新潟大学, 医学部・附属病院, 助教授 (70251808)
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Keywords | 慢性糸球体腎炎 / 糸球体硬化 / 実験腎炎 / 遺伝子 / アポトーシス / 糖尿病性腎症 / 最終糖化産物 / 膜性腎症 |
Research Abstract |
従来、実験腎炎で使われてきた動物モデルは、急性・一過性の経過を示すものが殆どであった。これらのモデルを用いた研究により、様々な炎症のメディエータやサイトカイン、成長因子などが糸球体病変の形成に関わっていることが明らかにされてきた。しかし一方では、ヒトの腎炎の多くが、何故、慢性・進行性の経過を辿り、腎機能低下をきたすのかは不明である。 私たちは、ラットで片側腎摘出後に抗Thy-1.1抗体を静注することによって、慢性・進行性の糸球体腎炎を惹起することが出来ることを証明し、このモデルと、急性・一過性モデルの各々の腎臓の間で著しく発現量に差のある遺伝子を、subtraction法を応用して単離することに成功し、そのうちの数種類の遺伝子を同定した。今後これらの遺伝子の機能を解析することによって、腎炎の慢性化の機序が明らかになることが期待される。さらに、これらの遺伝子の発現調節機構を解明することによって、現在特異的な治療法が無いに等しい慢性腎炎に対して、より特異的かつ有効な治療法が開発される可能性もある。これらの研究成果は、平成9年度第40回日本腎臓学会学術総会、第30回アメリカ腎臓学会等で発表された。 近年、腎病変の進行には、アポトーシスが重要な役割を果たしていることが知られ、注目を浴びている。しかし、実際のヒト腎生検標本で糸球体内にアポトーシスを認めることはまれであり、各種動物モデルでも糸球体障害の極期に1糸球体あたり1個以下を認めるのみである。私たちは、TUNEL法(terminal de-oxynucleotidyl transferase-mediated dUTP-biotin nick end-labeling method)とレーザー顕微鏡を組み合わせることにより、より正確にアポトーシス細胞を検出し、詳細に糸球体細胞のターンオーバーを検討する方法を確立した。 糖尿病性腎症に関しては、ラット糖尿病モデルの糸球体基底膜を免疫電顕で観察し、腎症早期にコンドロイチン硫酸が増加することを報告した。また、AGE(最終糖化産物、advenced glycosylation end product)をヒト糖尿病性腎症腎生検標本で検出し、AGE蓄積が腎症の発症・進展に関与していることを確認した。さらに、多数例の組織学的検討を行い、糸球体病変のみでなく、間質病変が並行して出現・進展することを報告した。 また、膜性腎症については、当科で腎生検を行った58症例の治療と予後を検討し、全体の予後が良好であることと、副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬による治療が、アスピリン単独あるいは抗血小板薬による治療に比較して有意に予後を改善させなかったことを報告した。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Ichiei Narita, et al.: "Identification of genes specifically expressed in chronic and progressive glomerulonephritis" Kidney International. 52,Suppl.63. 215-217 (1997)
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[Publications] Saori Omori, et al.: "Quantification of apoptotic cells using isolated glomeruli" Nephron. 77. 474-478 (1997)
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[Publications] Ryou Karasawa, et al.: "Early increase of chondroitin sulfate glycosaminoglycan in the glomerular basement membrane of rats with diabetic glomerulopathy" Nephron. 76. 62-71 (1997)
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[Publications] Naofumu Imai, et al.: "Histological localization of advanced glycosylation end products in the progression of diabetic nephropathy" Nephron. 76. 153-160 (1997)
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[Publications] Mitsuhiro Ueno, et al.: "Tubulointerstitial lesions in non-insulin dependent diabetes mellitus" Kidney International. 52,Suppl.63. 191-194 (1997)
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[Publications] Shinichi Nishi, et al.: "Prognosis of Japanese membranous nephropathy patients with nephrotic syndrome" Kidney International. 52,Suppl.63. 215-217 (1997)