1996 Fiscal Year Annual Research Report
動脈硬化惹起性リポ蛋白の腎障害性についての研究-とくにメサンギウム細胞におけるPKCおよびTGF-βを介したフィプロネクチン産生に対する影響について-
Project/Area Number |
08671308
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
芳野 原 東邦大学, 医学部, 教授 (70174969)
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Keywords | メザンギウム細胞 / PKC / TGF-β / small,dense LDL |
Research Abstract |
LDL粒子は均一な組成やサイズを持つものではなく種々の異なった性質を持つ粒子集団の総称である。本粒子が多くの生物学的効果を保有することは良く知られているが,とくに近年,比重が重く,サイズの小さいLDL(small,dense LDLと呼ばれている)の催動脈硬化作用が重要視されている。本粒子はin vitroで銅イオンによる酸化を受けやすく,内皮細胞由来の血管弛緩因子(EDRF)を阻害することが報告されている。臨床的にはこのsmall,dense LDLを持つ症例"パターンB"と呼ばれ,本粒子を持たない場合に比べて冠動脈疾患発症の危険度が3倍に達することが報告されており,したがって糖尿病患者ではパターンBの場合はとくに大血管障害進展予防のためにもLDL粒子サイズに対する治療が必要と考えられる。我々はすでにインスリン非依存生糖尿病(NIDDM)患者ではパターンB症例において尿中微量アルブミン出現の頻度がパターンA(LDLサイズが大きい場合)にくらべて有意に高いことを発見した(Atherosclerosis 123:57,1996)。さらにfibrate系薬剤によるLDLサイズの拡大が尿中微量アルブミン減少を引き起こすことをも発見した(平成7年度日本動脈硬化学会冬期大会にて発表)。今回はさらにnormoalbumin尿のNIDDM群を新たな糖尿病性腎症のマーカーの候補と考えられる尿中FDPの排泄量で2群に分け、パターンBを示す場合に本尿中微量蛋白が有意に多く排泄されることを見いだした。即ち、small,dense LDLが腎毒性を持ち,糖尿病性腎症を進展せしめる可能性が示された。次に我々は比重1.040でLDLを2分画し(d=1.019〜1.040 & 1.040〜1.063),比重の重いLDLがそれ以上の軽いLDLに比べて明らかにサイズが小さいことを電子顕微鏡を用いてnegative staining法にて確認し(直径25.5nm以下)、メサンギウム細胞とのインクベーションに用いている。現在このサイズの確認されたsmall,dense LDLを使用してその細胞毒性を明らかにするべく実験を続行中である。
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