1997 Fiscal Year Annual Research Report
GCP症候群の相同疾患マウスにおける多指症/無嗅脳症の発症メカニズム
Project/Area Number |
08671325
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
成瀬 一郎 京都大学, 医学研究科, 助教授 (20113326)
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Keywords | GCPS / 多指症 / 無嗅脳症 / Pdn / Gli3 |
Research Abstract |
遺伝性多指症/無嗅脳症マウス(Pdn/Pdn)の責任遺伝子がGli3であることが判明してきた。Gli3遺伝子は、マウス染色体13A2-3にある。この領域は、ヒトの7番染色体短腕の相同領域である。ヒト染色体7p13には、Greig cephalopolysyndactyly syndrome(GCPS)がマップされていて、その責任遺伝子はGLI3である。GCPSは特異的顔貌、大頭症、手足の多合指症を示す。Gli3およびGLI3遺伝子は高いホモロジーを持ち、Pdn/PdnマウスとGCPSは、よく似た表現型を示すことから、相同疾患と考えられる。この事から、Pdn/Pdnマウスの発生異常の発症メカニズムを、ヒトのGCPS患者の発症メカニズムに外挿できるのではないかと考えた。 本年度は、Pdn/Pdnマウスが母乳を飲まず、生後間もなく死亡することについて調べた。マウス新生仔が母親の乳頭を見つけ吸啜する行動は、whisker(髭)による触覚か嗅覚によると考えられる。出生直後のPdn/Pdnマウスにマイクロピペットでミルクを飲ませると、吸啜行動が認められ、胃内にミルクの存在を認めた。また、排便も認められたことから、消化器系の異常で母乳を飲まないのではないことが示唆された。それで、Pdn/Pdnは母親の乳頭を探すことができず、母乳を飲めないのではないかと想定した。whiskerは、三叉神経支配である。今回、Pdn/Pdnにおける三叉神経の発生異常を抗neurofilament抗体による免疫組織化学的方法によって調べた。胎生13・14日にはPdn/Pdnでも正常と同じく三叉神経線維がwhiskerの毛根に向かって伸び、一部に、外根鞘基底膜まで、侵入している像も認められた。また、生後0日のPdn/Pdnのwhisker毛根部を調べると、神経線維が外根鞘に入っていた。また、触覚を司るメルケル細胞も毛乳頭部に確認できた。このことから、Pdn/Pdnのwhiskerには問題がないと考えられた。Pdn/Pdnでは、嗅神経線維が終脳に接着せず、その後も中枢神経系に侵入しない。その結果、嗅球も欠損している。以上の結果から、マウス新生仔が母親の乳頭を見つけて吸啜する行動は、whisker-三叉神経系による触覚よりも嗅覚系に依存していることが示唆された。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] Naruse I., Keino H. and Taniguchi M.: "Surgical manipulation of mammalian embryos in vitro." Int.J.Dev.Biol.41:2. 195-198 (1997)
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[Publications] Tanaka Y., Naruse I., Maekawa T.et al.: "Abnormal skeletal patterning in embryos lacking a single Cbp allele:A partial similarity with Rubinstein-Taybi syndrome." ProNAS. 94:19. 10215-10220 (1997)
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[Publications] Taniguchi M., Yuasa S., Fujisawa H., Naruse I.et al.: "Disruption of semaphorin III/D gene causes severe abnormality in peripheral nerve projection." Neuron. 19:3. 519-530 (1997)
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[Publications] Naruse I., Keino H. and Taniguchi M.: "Fetal laser surgery exo utero in mice." Cong.Anom.36. 107-113 (1996)
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[Publications] Sugisaki N., Hirata T., Naruse I., et al.: "Positional cues that are strictly localized in the telencephalon induce preferential growth of mitral cell axons." J.Neurobiology. 29. 127-137 (1996)
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[Publications] Ueda S., Aikawa M., Kawata M., Naruse I., et al.: "Neuro-glial neurotrophic interaction in the S-100β retarded mutant mouse (Polydactyly Nagoya).III.Transplantation study." Brain Res.738. 15-23 (1996)
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[Publications] 成瀬一郎 慶野裕美: "アポトーシスの分子機構と病態" メディカルトリビューンブックス、アクセル・シュプリンガー出版, 126(7) (1996)
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[Publications] 成瀬一郎: "組織細胞化学1996" 日本組織細胞化学会編, 208(4) (1996)