1996 Fiscal Year Annual Research Report
外来神経切除後に出現する大腸異常運動の病態解明と対策に関する臨床的・実験的研究
Project/Area Number |
08671403
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
森田 隆幸 弘前大学, 医学部・附属病院, 講師 (30167689)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 文彦 弘前大学, 医学部・附属病院, 助手 (70271822)
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Keywords | 直腸癌手術 / 術後排便障害 / 外来神経損傷 / 筋間神経叢 / transit study |
Research Abstract |
大腸に分布する交感神経・副交感神経など外来神経が切除された場合、支配腸管にいかなる異常運動が出現し、筋間神経叢の神経細胞にどの程度の変性が生じるのかについて検討した。 臨床例において直腸癌低位前方切除例を対象に内圧検査や腸管輸送能検査(transit study)を行った。その結果、吻合部口側腸管に異常律動波の出現が観察され、特にそれが頻繁する例では肛門管静止圧をうわまわる71.5±7.3mmHg振幅の律動波が記録された。Transit studyではマーカーが排泄されるまでの全腸通過時間は健常人29.8±3.2時間に対して直腸癌手術例では41.1±1.7時間と延長し、特に吻合上左側結腸にマーカーが貯留する傾向が知られた。すなわち、直腸手術後には吻合部口側腸管に異常律動運動が惹起されること、さらに大腸輸送能そのものも障害されることが明らかになったが、交感神経、副交感神経いずれの損傷に起因する現象であるのかについて検討を進めている。 一方、雑種成犬の外来神経を切除し、1週間、3カ月後、6カ月後に大腸を採取、直腸から上行結腸までの各部位における筋間神経叢の形態的変化を観察した。筋間神経叢内の神経細胞には軸索反応、空胞化、萎縮濃染化などの変性所見が出現し、その程度は下行結腸、直腸、横行結腸、上行結腸の順に強かった。現在、これら形態的変化を経時的に観察しているが、全体として筋間神経叢内の神経細胞は減少しoligogangliosisの状態が長期的に持続する所見がみられている。また、筋間神経叢の超微形態を電顕的に観察すると3カ月目頃より変性軸索に介在して再生線維と考えられる小径軸索の出現がみられるようになるが、これら一連の形態学的変化が腸管機能とどのようにかかわるのかについても検討したい。
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