1997 Fiscal Year Annual Research Report
外来神経切除後に出現する大腸異常運動の病態解明と対策に関する臨床的・実験的研究
Project/Area Number |
08671403
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
森田 隆幸 弘前大学, 医学部・附属病院, 講師 (30167689)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 文彦 弘前大学, 医学部・附属病院, 助手 (70271822)
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Keywords | 直腸癌手術 / 術後排便障害 / 外来神経損傷 / 筋間神経叢 / transit study |
Research Abstract |
大腸に分布する交感神経・副交感神経など外来神経が切除された場合、支配腸管にいかなる異常運動が出現するのかについて、本年度は臨床例を中心に検討を加えた。先ず、直腸癌低位前方切除術例について術前・術後に放射線非透過性マーカーを用い腸管輸送能検査(transit study)を行い手術操作によってどのような変化をきたすのかを検討した。術前の全腸通過時間は29.7時間であり、健常対照群の29.8時間と同様であったが、術後の全腸通過時間は41.4時間と有意に遷延した。大腸のどの区間で停滞するのかを区間通過時間として検索したところ、上行結腸から吻合部より口側の左側結腸のマーカーが停滞することが知られた。一方、大腸内のマーカー輸送パターンはslow typeとrapid typeの2つに大別され、前者はマーカーが少量ずつ肛門側に輸送され約40時間で排泄されるもの、後者は大腸内に輸送されたマーカーが約20時間で一気に排泄されるものである。術前のマーカー排泄パターンはslow typeが56%、rapidが44%であったが、術後にはslow typeは全例slow typeに、rapid typeの80%がslow typeに移行し、総じて90%の症例がslow typeを示し、臨床的には排便時に下剤を要する便秘症状を呈した。術式別に下腸間膜動脈起始部結紮群と左結腸動脈を温存(血流の確保と腰結腸神経の温存)の2を比較したが、差はみられなかった。以上の結果より直腸癌低位前方切除術後にみられる大腸輸送能の低下は骨盤神経叢より直腸枝をえて直腸壁内を近位側にむかって上行する壁内副交感神経(壁内骨盤神経)の腸管切離時の離断によるものと考えられた。
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