1996 Fiscal Year Annual Research Report
門脈塞栓術後の肝再生のメカニズムと肝細胞増殖因子の肝再生に対する効果
Project/Area Number |
08671414
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
窪田 敬一 東京大学, 医学部・附属病院, 講師 (70260388)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
針原 康 東京大学, 医学部・附属病院, 講師 (10189714)
松浦 篤志 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (90242057)
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Keywords | 門脈枝塞栓術 / 肝再生 / Transforming Growth Factor α |
Research Abstract |
術後の肝不全はきわめて重篤な合併症であり、手術適応や切除術式の選択に制限を与えている。障害肝を背景とした肝細胞癌や黄疸を伴う肝門部胆管癌では術後の肝不全の危険から切除不能と判断せざるを得ない症例も存在した。門脈枝塞栓術はこれらの症例に対する肝切除の適応拡大のために、1982年幕内らが最初に開始した手枝であり、切除予定側の門脈枝を塞栓して萎縮させ、非塞栓肝を再生肥大させて術後の残肝負荷の軽減を図るものであり、本研究ではこれを肝再生をみるモデルとした。肝細胞増殖促進因子の中でTransforming Growth Factor α(TGFα)は肝細胞で産生されるmitogenであり、肝切除後の患者でその血中濃度が術後の肝再生率と相関すると言われている。本研究では門脈枝塞栓術前後の肝細胞増殖因子の推移を検討し、肝再生のメカニズムを解明しようとした。 対象は術前に門脈枝塞栓術を施行した10例であり、その内訳は胆管癌5例、転移性肝癌3例、肝細胞癌1例、胆嚢癌1例であった。また、その非癌部肝組織は正常肝9例、慢性肝炎1例であった。門脈枝塞栓術は開腹下に回結腸静脈の枝を経由して行い、塞栓物質としてはGelform Powder 2gとAmikacin 200mg,トロンビン1万単位を混合したものを用いた。血清TFG-αはELISA法にて測定した。採血は塞栓前と1,2,3,5,7,14病日それ以降は症例により21病日まで採取された。塞栓前のTGF-αは5pg/ml未満群4例、5pg/ml以上15pg/ml未満群3例、15pg/ml以上群3例であり、10症例のうち慢性肝炎を伴った肝細胞癌症例は塞栓前値が10症例の中で一番高値であった。全例とも経過中に塞栓術による肝機能への影響は軽度であった。また、10症例のうちで9例において塞栓後2峰性のピークを示し、最初のピークは第1病日から第3病日の間にあり、2番目のピークは第14病日から第21病日にあった。
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