Research Abstract |
染色体解析による食道癌の悪性度診断の目的で,当科で切除した食道扁平上皮癌34症例における染色体14q32領域の欠失の有無と臨床病理学的所見および予後との関連につき検討した.DNAの抽出は,パラフィン包理切片からが27例,新鮮切除標本からが7例であった. プライマーは,D14S62,D14S51,D14S267,D14S250の4つを用いた.正常DNAのバンドと比較し,癌DNAで対応するバンドの消失あるいは濃度の低下をもってLOH(+)と判定し,次の結果を得た. 1.ほぼ全例でバンドが得られたが,多型を示した例はD14S62とD14S267がそれぞれ14例41.2%,D14S51が0%,D14S250が3例8.8%であった.そのうち,LOHと判定した症例は,D14S62で8例57.1%,D14S267で5例35.7%,D14S250で0例0%であった. 2.LOHと臨床病理学的因子との関連では,性別,組織型,占居部位,深達度,リンパ節転移,脈管侵襲,組織学的進行度および根治度との間に有意な関係は認められなかった. 3.LOHの有無と予後には有意な関係は認められなかった. まとめ:染色体14番長腕のテロメア側の32領域に0〜57%の頻度でLOHが認められ,本領域の異常が食道扁平上皮癌においても,何らかの形で関与している可能性が示唆された.しかし,この領域の欠失と各臨床病理学的所見との間に有意な相関関係は認められず,今回の検討では,食道扁平上皮癌における悪性度の指標となる結果は得られなかった.今後,dysplasiaや粘膜癌についても検討し,この領域の欠失が食道癌の発生や悪性化に及ぼす影響をさらに研究したい.
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