1996 Fiscal Year Annual Research Report
肝切除術後肝不全に対する術直後低分子領域蛋白除去療法に関する検討
Project/Area Number |
08671447
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
西田 峰勝 山口大学, 医学部・附属病院, 助手 (80243666)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 良一 山口大学, 医学部・附属病院, 助手 (30187471)
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Keywords | 術後肝不全 / 血液浄化 / LCAT / ヒアルロン酸 / Alka phospase ratio |
Research Abstract |
術後早期に、肝不全の原因物質や増悪物質の除去、ならびに種々のmediatorを介した多臓器障害の発現防止の必要があるものと考え、後述する術後肝不全high riskグループに対して、原則として術翌日24時間に亘りEVAL-2A膜を使用した低分子領域蛋白除去療法(CHF-LP)を行った。 【対象】我々はかねてより、肝切除後肝不全を併発した症例の第1病日における血清alkaline phosphase値が著明に低下することに着目解析し、ALPR(第1病日早朝のALP値/術直前ALP値)≦0.4を肝切除後肝不全high riskグループとして、本CHF-LPの適応症例とした。これらは大血管や膵頭十二指腸の合併切除を伴ったものなど10症例(CHF群)で、その術後肝機能やエンドトキシンの推移を、同時期に当科で肝切除を行い順調に経過した7例(対照群)、およびCHF-LP導入以前に当科で経験した肝切除術後肝不全9例(肝不全群)のそれと比較検討した。 【結果】CHF群のビリルビン値は、CHF-LPにより翌日にはほぼ半減し、その後も低値を示した。一方肝不全群では、第1病日のビリルビン値がCHF群のCHF-LP施工前に比べ低値であるに関わらず、その後漸増し著明な高ビリルビン血症を呈していた。肝臓における蛋白合成能の指標であるLCATは、CHF-LPにより著明に増加し、過大侵襲の手術が行われたに関わらず、術後1週間目のLCAT値は、対照群とほぼ同等の値を示した。肝類洞内皮細胞障害の指標となるヒアルロン酸は、対照群において術後1週間増加傾向を示したのに比べ、CHF群ではCHF-LPにより増加の抑制ならびに継続的低下を示した。CHF群のエンドトキシン値も、CHF-LPにより著明な減少を示し、その後も低値を示した。 【まとめ】肝切除後肝不全high riskグループに対する術翌日24時間のCHF-LPにより、ビルリビン、エンドトキシン、ヒアルロン酸、およびLCATは著明な改善を示し、その後もひきつづき改善傾向が維持されたことは、一過性の血液浄化機転以外に、肝不全の原因物質や増悪物質の除去、肝と他臓器との種々のmediatorを介した相互臓器障害の防止などにより生体防御機構が増強されるものと思われた。
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