| Research Abstract |
本研究は,臨床肝切除およぼ肝移植に伴う肝阻血・再潅流における肝微小循環の動態を,生体蛍光顕微鏡を用いて解析し,同時に,循環障害に対する新しい治療法を試みることを目的とする.
研究方法として,実験動物(ラット)を用いて,肝常温阻血モデルおよび長時間冷保存肝の移植モデルを作成し,術後に,生体蛍光顕微鏡下に肝の微小循環の変化を観察することにより,微小循環を動的に解析することが,本研究の中核となる.
平成7年度および平成8年度は,肝類洞内の血行動態の変化および炎症担当細胞(好中球,単球)の血管内皮への膠着状況を観察,定量化し,病態を解明するための,動物モデル,即ち,肝阻血,肝移植モデルを完成させ,さらに予備実験として,生体内での肝細胞索の染色(FITC)によるコントラストから,肝類洞内の血流の観察,白血球の生体内染色(Rhodamine 6G)によるこれらの細胞の血管内皮への接着状況を生体蛍光顕微鏡下に観察した.
平成9年度は治療による血流改善効果について検討した.長時間保存肝(24時間保存)の移植後の肝臓の観察では,白血球の類洞内皮細胞および最小肝静脈への接着が有意に増加していたことから,抗接着分子抗体(anti-CD11b/CD18抗体)静脈内投与による阻血肝障害に対する治療を行った.抗体投与群では,肝微小循環の改善,白血球の類洞内皮細胞および最小肝静脈への接着の有意な抑制が観察され,生存実験においても,有意に術後の生存率の改善が観察された.
これらの結果から,臨床肝切除およぼ肝移植に伴う肝阻血・再潅流障害において,血管内皮細胞への白血球の接着が重要な役割を担っていることが示されたと同時に,従来の薬剤治療に加え,白血球接着分子に対する抗体による治療が,新しい有効な治療となりうることが示唆された.
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