1998 Fiscal Year Annual Research Report
膵癌の浸潤、転移における微小環境の検討-免疫機構、分化誘導との関連
Project/Area Number |
08671475
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Research Institution | OSAKA CITY UNIVERSITY |
Principal Investigator |
澤田 鉄二 大阪市立大学, 医学部, 助手 (60275253)
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Keywords | 膵癌 / 浸潤、転移 / 微小環境 / サイトカイン / 免疫機構 / ICAM-1 |
Research Abstract |
膵癌におけるICAM-1発現の低下は肝転移能と関連し、またその発現は種々のサイトカインにより制御され、とくにTGF-βがICAM-1発現を低下させることが判明したが、その作用が特異的なものであるかをさらに検討した。TGF-β1;4ng/ml処理にて膵癌細胞株;SW1990,CAPAN-2,PANC-1はいずれの細胞においてもICAM-1発現は低下したが、この効果は抗TGF-β1中和抗体;30μg/ml添加にてブロックされた。またTNF-α添加にて増強するCAPAN-2細胞のICAM-1発現はTGF-β1にて抑制され、これらの結果からTGF-β1のICAM-1発現におよぼす影響がTGF-βレセプターを介した特異的な作用であることが示唆された。さらにノザンブロットにてTGF-β1によるICAM-1のmRNAレレベルでの変化を検討したところ、いずれの細胞においても若干の低下がみられたものの有意な変化は認めず、TGF-β1の作用は転写レベル以後の蛋白発現における異常が関与しているものと考えられた。以上のことよりTGF-β1が微小環境において癌細胞の免疫認識機構に関与する接着分子の発現を変化させ、宿主免疫担当細胞のみならず癌細胞自体にも作用し、腫瘍免疫に抑制的に働いていることが判明した。 そこで次にTGF-β1の膵癌細胞の浸潤、転移能に関与する種々の因子に対する影響を検討した。その結果、TGF-β1は膵癌細胞の細胞外マトリックス(Matrigel)への接着能を有意に増強し、また浸潤に関与する蛋白分解酵素、u-PA,MMP-2の産生能を増強し、さらにはin vitroでのTranswell double chamberを用いた浸潤性を促進させた。これらの結果を反映し、in vivoでの脾内注射による肝転移モデルでの検討において、CAPAN-2はコントロールでは転移を示さないのに対しTGF-β1処理にて肝転移が誘導され、TGF-β1が転移形成に深く関与しているが明らかとなった。今後さらに微小環境におけるTGF-β1の役割を検討するために、我々の確立したin vivo同所移植モデルを用い、膵癌の浸潤、転移におけるTGF-β1の関与を検討する予定である。
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