1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08671494
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Research Institution | Kinki Univ. |
Principal Investigator |
久保 隆一 近畿大学, 医学部, 講師 (70225192)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 晃 近畿大学, 医学部, 講師 (60179736)
安富 正幸 近畿大学, 医学部, 教授 (60028438)
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Keywords | 直腸癌 / 神経浸潤 / laminin染色 |
Research Abstract |
我々は以前より1aminin染色を用いて大腸癌の浸潤・転移に関する検討を行ってきた。基底膜構成成分であるLamininは神経周膜および神経線維束を明瞭に染色できることから、直腸癌神経浸潤の判定に有用ではないかと考えた。そこで直腸癌切除標本についてlaminin染色とS-100染色、鍍銀染色、HE染色それぞれ比較検討した。神経浸潤陽性率はlaminin染色、S-100染色、鍍銀染色、HE染色においてそれぞれ47.8%、58.3%、19.4%、25.0%となった。S-100染色では神経線維束は明瞭に染色されるが神経周膜は染色されないため、小さな神経周囲の癌細胞を神経浸潤と判定し、神経浸潤が最も高率になったものと考えられる。鍍銀染色では神経周膜の染色性は良好であるが、間質の結合織の細網線維も染色され、神経周膜との区別が困難な場合があり、神経浸潤が最も低率になったものと考えられる。HE染色では小さな神経の同定が困難な場合があった。Laminin染色では神経周膜および神経線維束が明隙に染色されることから、小さな神経組織の同定も容易であった。以上のことから、直腸癌神経浸潤の判定には、検討した染色法の中でlaminin染色が最も有用であった。さらに、laminin染色により神経浸潤形式は神経線維束型(10.7%)、神経周囲間隙型(52.0%)、これら両者のみられる混在型(37.3%)の3つに分類でき、神経周囲間隙型が神経浸潤形式として重要であると考えられた。 他の病理学的諸因子との関係をみると、神経浸潤は壁深達度、静脈侵襲およびリンパ節転移と有意な相関を認めた。さらに全体の局所再発率は16.6%、神経浸潤陽性例では26.7%であり、神経浸潤陰性例では7.3%で、神経浸潤と局所再発との間に有意な相関が認められた。累積7年生存率は神経浸潤陽性39%、陰性77%であり、両者に有意差が認められた。神経浸潤は直腸癌の局所再発および予後因子であり、このことは治療方針をたてる上でも重要であると考えられた。直腸癌の神経浸潤の機序解明のため、さらなる検討を加えていきたい。
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Research Products
(1 results)