Research Abstract |
本研究では,気管移植片の長期保存法として採用している凍結保存の移植片への影響を検討することと,凍結保存を受けた移植片の免疫反応を検討し,凍結保存時間との関連性を明らかにすることを目的とする。これにより,同種移植片の凍結保存における耐用時間が推定できるものと考えられる。 1,長期間凍結保存による気管移植片への影響に関する検討 Lewisラット気管を,RPMI-1640,20%FCS,10%DMSOで構成される保存液に漬し,Bicellという簡易凍結保存器を用いて-80℃まで徐々に冷却し一定の期間凍結保存した。0週間,2週間,1ケ月,3ケ月,6ケ月,12ケ月の保存後,37℃の恒温曹で急速解凍を行い,移植片を同系ラットの腹腔大網内へ異所性移植を行った。移植後4週間目に移植片を採取し,気管の主要組織構造物である上皮や軟骨に注目して組織学的に検討した結果凍結保存時間が長くなるにつれて上皮は繊毛のない円柱上皮の頻度が多くなり,軟骨は有核細胞の数が減少した。6ケ月以上の凍結保存では,移植後もその形態が不可逆性に増悪したのに比べ,3ケ月以下の凍結保存では,組織の変性も移植後可逆的に軽快した。以上より,凍結保存の限界は3ケ月と考えられた。 2,長期間凍結保存による同種気管移植片の免疫反応に関する検討 Lewisラットの気管をDonorとして,1,と同様の方法で凍結保存後,移植片をRecipientであるBrown Norwayラットの腹腔大網内へ異所性移植を行った。移植後4週間目に移植片を採取し,組織学的に検討した結果,免疫反応としては上皮の再生不良,上皮下の高度な肥厚,軟骨有核細胞の減少,そして単核球の高度な浸潤が認められた。しかし凍結保存時間の延長には関係なく,免疫反応は同程度認められた。
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