悪性グリオーマ細胞の増殖、血管新生に関わる因子の解明:heparin-binding EGF-like growth factor(HB-EGF)に関する研究

1996 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 08671567
• Research Category: Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
• Research Institution: The University of Tokyo
• Principal Investigator: 谷口 真 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (50262001)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 三島 一彦 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (00282640)
• Keywords: 悪性グリオーマ / 細胞増殖 / 血管新生

Research Abstract

グリオーマ細胞で高く発現しているheparin-binding EGF-like growth factor(HB-EGF)の、細胞増殖、腫瘍形成への直接の関与を明らかにし、さらに血管内皮増殖因子として血管新生に影響を与えるか、あるいは腫瘍細胞の運動能制御因子として腫瘍浸潤にも寄与するか等に関しても検討し、その機能解析を行なうことを本研究の目的とした。
A)グリオーマ細胞増殖に対するHB-EGFの関与
グリオーマ細胞で産生されるHB-EGFの機能を中和抗体投与で抑制したところ、細胞増殖能がコントロールの70%に抑制された。従って、HB-EGFはオートクライン増殖因子としてグリオーマの増殖に深く関与していることが示唆された。
B)グリオーマ細胞血管新生能へのHB-EGFの関与
HB-EGFは血管内皮細胞への直接の増殖活性はないと報告されている。しかし、TNFα等は間接的に内皮細胞増殖因子を誘導することで血管新生に関わっているという報告もあり、HB-EGFにもそのような現象であてはまる可能性があると考えられる。そこで、培養グリオーマ細胞にrecombinantHB-EGF(rHB-EGF)を投与し、グリオーマ細胞に誘導されてくる血管内皮細胞増殖因子vascular endothelial growth factor(VEGF)のmRNA、さらに培養上清中に分泌されてくるVEGFのタンパクをNorthern hybridization及びWestern blotting法でそれぞれ検討した。rHB-EGF刺激により、VEGFmRNAは3時間後より上昇し、またこの発現上昇は加えるrHB-EGFの濃度依存性に亢進し、VEGFタンパク分泌も増強された。
以上の結果より、HB-EGFはグリオーマの増殖のみならず、間接的にではあるが、VEGFの誘導を介して血管新生にも関与している可能性が示唆された。