1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08671665
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
馬渡 正明 九州大学, 医学部, 助手 (80202357)
|
Keywords | 骨芽細胞 / 破骨細胞 / TGF-β1 / IL-11 |
Research Abstract |
今回、我々は流体剪断応力が骨芽細胞に与える影響を調べる試みとして、in vitroでヒト骨肉腫細胞株:SaOS-2に流体剪断応力を与え、各種成長因子、サイトカインの発現を調べた。バイオメカニクスモデルから生理的強さと考えられる1.7Pa(パスカル)の流体剪断応力をSaOS-2に経時的に与えた。まず、Northern解析を行った。骨形成促進因子と考えられるTGF-β1のmRNAの発現は3時間後をピークに、対照に比べ約3倍の増加をみた。一方、骨吸収促進因子と考えられるlL-11のmRNAの発現は6時間後をピークに、対照に比べ約5倍の増加をみた。次に、培養上清についてELISA解析を行った。TGF-β1は24時間後には対照に比べ約3倍の増加をみた。一方、lL-11は24時間後には対照に比べ約7倍の増加をみた。SaOS-2に24時間流体剪断応力を与えると、その培養上清中には骨吸収因子の方がより産生されている結果を得たため、SaOS-2に24時間流体剪断応力を加えた後の培養上清を、ヒト前破骨細胞株:FLG29.1を用いた破骨細胞誘導アッセイ系に加え、破骨細胞のマーカーである酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ(TRAP)陽性細胞の誘導について、対照のストレスを与えなかった培養上清と比較した。対照に比べ、流体剪斬応力を与えた培養上清は約2倍のTRAP陽性細胞の誘導を見た。更に、抗lL-11中和抗体の添加により、この誘導促進作用は有意に抑制された。この結果、骨に荷重がかかると、流体剪斬応力が骨芽細胞系に作用し、骨芽細胞はまず骨形成促進因子であるTGF-β1を産生して、骨形成を行い、次に骨吸収促進因子であるlL-11を産生して破骨細胞を誘導し、骨吸収を行うサイクルがある可能性が示唆された。運動量不足下ではこのサイクルが失われ、低回転性の骨量低下をきたすと考えられる。現在、象牙片を用いた骨吸収窩形成アッセイ、更にラットの初代培養骨芽細胞、破骨細胞を用いた同様の系にて解析中である。
|