1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08671671
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Research Institution | KUMAMOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
井手 淳二 熊本大学, 医学部, 助手 (10253725)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山鹿 眞紀夫 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (90145318)
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Keywords | 末梢神経牽引 / 腕神経叢 / 逆行性軸索内輸送 / WGA-HRP / 神経内血管透過性 / 神経内浮腫 |
Research Abstract |
【目的】腕神経叢への軽度の牽引負荷は、明らかな運動・知覚麻痺は認めないが、頚部から上肢にかけての疼痛やシビレ感を引き起こす。この病態を解明することを目的とする。【方法】創外固定器を用いてラット大腿骨を10%及び20%延長することで坐骨神経を間接的に牽引し、それによって生じる神経内逆行性軸索輸送の変化をWGA-HRPを用いて調べた。またラット上肢を牽引(1N〜6N)する事で腕神経叢を間接的に牽引し、SEP、MEPでの伝導障害の回復過程と、EBAを用いた神経内血管透過性の変化、及び神経内浮腫について調べた。【結果】WGA-HRP陽性脊髄前核細胞数は対照群で150.6±29.8細胞、10%延長群で155.4±28.9細胞、20%延長群で69.6±16.6細胞であり、20%群では対照群に比べ有意に低下していた。逆行性軸索内輸送指数は対照群で100.1±4.0%、10%延長群で97.3±5.8%、20%延長群で43.2±8.4%であり、20%群では対照群、10%群に比べ有意に低下していた。10%群と20%群の神経伸張率は各々5.7±1.1%、11.1±1.0%であった。SEPとMEPの潜時は、負荷6N群では4日後まで有意に遅延した。神経内血管透過性については腕神経叢trunkでは2N以上、rootでは4N以上の牽引負荷でEBAの血管外漏出を認めた。組織学的には4N以上の牽引負荷で2日後、4日後に腕神経叢に浮腫を認めた。【考察】約11%といった直接的な神経損傷を受けない程度の比較的軽微な神経牽引伸張にて神経内逆行性軸索輸送は傷害され、この結果神経機能不全に陥ると考えられる。また、EBAの漏出は神経内膜の防御機構の破綻を意味し、神経内浮腫の原因となり、神経内膜組織圧が上昇するため伝導障害の回復が遷延するものと考えられる。
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