1998 Fiscal Year Annual Research Report
心拍、血圧変動の低周波数ゆらぎに及ぼすアンジオテンシン変換酵素遺伝子多型性の影響
Project/Area Number |
08671727
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
木村 智政 名古屋大学, 医学部, 講師 (50161568)
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Keywords | 心拍変動 / 血圧変動 / アンジオテンシン / アンジオテンシン変換酵素 / アンジオテンシン変換酵素遺伝子 / 交感神経 |
Research Abstract |
平成10年度と同様にアンジオテンシン変換酵素(ACE)遺伝子多型(II型、ID型、DD型)の解析をおこなった。静脈血5mlからDNAを調整し、遺伝子増幅法(PCR)により得られたACE遺伝子を電気泳動させ、紫外線下にPCR産物の泳動パターンをポラロイドで撮像し、ACE遺伝子を490bp(II型)、490および190bp(ID型)、190bp(DD型)の3種類に分類した。研究対象は昨年に引き続き、特に自律神経異常をきたすとされている慢性難治性疼瘍疾患の代表であるComplex regional pain syndrome(CRPS)患者と、さらにニューロパシックペインの代表的疾患である帯状庖疹後痛患者を対象として測定解析した。またアンジオテンシノーゲン遺伝子多型解析も開始した。この結果ACE遺伝子多型のなかでDD型遺伝子は約1/3の患者で観察された。日本人のDD型は18%前後と報告されており、きわめて高頻度で観察されたことになる。またこれらの患者ではACE活性が他の二つの遺伝子群に比較して優位に上昇していた。カテコールアミン3分画、血漿レニン活性、アンジオテンシ1および2の測定結果では、DD群、II群およびID群とでは有意差は生じていなかった。また神経損傷の認められないCRPSI型の方が、神経損傷が明らかに認められるCRPSII型よりも有意にDD型の占める割合が高く、CRPSI型ではレニン・アンジオテンシン系が特に関与しているものと推測された。また心臓の自律神経活動を反映している心拍変動の解析では、3群間では特に有意差は認められなかった。Complex regional pain syndrome患者では交感神経機能が亢進していることはよく知られており、DD型の多いComplex regional pain syndrome患者では何らかの遺伝的な素因も疼痛発症機序に関与しているものと推察され、発症予測や有効な治療法選択への応用が考えられた。
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[Publications] 木村智政、小松 徹: "心拍変動の周術期モニタリングへの応用" 臨床モニター. 9. 104-112 (1998)
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[Publications] Kimura,T., Komatsu,T.: "Angiotensin-converting enzyme gene polymorphism in patients with neuropathic pain." Anesthesiology. 89. A1121 (1998)
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[Publications] 木村智政、小松 徹: "CRPS患者におけるACE遺伝子多型解析" J of Anesthesia. 12 Suppl. 248 (1998)
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[Publications] 木村智政、小松 徹: "ニューロパシックペイン患者における自律神経機能評価" 日本ペインクリニック学会誌 第32回総会号. 5. 261 (1998)
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[Publications] 川瀬正樹、小松 徹、近藤潤夫、西脇公俊、木村智政、島田康弘: "出血の心拍・血圧変動に及ぼす影響 : 周波数解析" 麻酔. 47. 925-932 (1998)
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[Publications] 木村智政、小松 徹: "ニューロパシックペイン患者における自律神経機能評価-特にアンジオテンシン変換酵素遺伝子多型性からみて-" ペインクリニック. 20. 27-31 (1999)
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[Publications] Komatsu,T., Kimura,N., Kimura,T.: "New balanced anesthesia. 1st ed." Mori,K. (Ed.), 3 (1998)