1996 Fiscal Year Annual Research Report
非平衡状態における抗コリンエステラーゼ薬の作用の検討
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08671737
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
太田 吉夫 岡山大学, 医学部・附属病院, 助教授 (30136006)
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Keywords | アセチルコリンエステラーゼ / 抗コリンエステラーセ薬 / ストップトフロー法 / 神経筋接合部 / 筋弛緩薬 / 酵素反応 |
Research Abstract |
【背景】抗コリンエステラーゼ薬(抗ChE薬)は非脱分極性筋弛緩薬のリバースの目的で用いられる。エドロフォニウム(Ed)とネオスチグミン(Neo)がよく用いられるが、この2種の薬物で、その抗ChE作用の強さと筋弛緩リバースの効果に差があることが知られている。通常、抗ChE作用は基質の濃度がほぼ一定の平衡状態で測定される。しかし、運動神経終板においてはアセチルコリン(ACh)の存在時間は1ミリ秒あるいはそれ以下と考えられ、このように基質の濃度が急速に変化する状況では、そこでの反応は平衡状態での反応と異なることが予想される。今回の実験では、ACh濃度が急速に変化する条件で抗ChE作用の強さを測定し、従来の結果と比較した。 【方法】ChE活性の測定はエルマン法を用いた。アセチルチオコリン(ATCh)とDTNBを含む燐酸緩衝液(A液)と、種々の濃度のEdまたはNeoを含む赤血球ゴ-スト(B液)を、ストップトフロー装置(RX.2000、Applied Photophysics)を用いて急速混和し、反応を開始させた。ATChの分解によって生じるチオコリン濃度を分光光度計(日本分光、Ubest-55)で測定し、反応開始直後とその後の平衡状態でのChE活性の変化を検討した。 【結果および考察】ストップトフロー法でも、通常のエルマン法による測定と同様の結果が得られた。反応開始直後においても、その後の平衡状態においても、ChE活性に変化は認められなかった。また、これはEdまたはNeoの存在下においても同様であった。これらの結果は今回の研究の作業仮定を否定するものであるが、今回使用した分光光度計の時間解像度は最高でも50msecであり、このため高速な変化を十分捉えられなかった可能性もある。今後、時間解像度のさらに優れた装置を用いて実験を継続する予定である。
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