1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08671828
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
白浜 勉 鹿児島大学, 医学部・附属病院, 講師 (90136862)
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Keywords | 膀胱癌 / 転移 / 糖鎖 / 分子生物学 |
Research Abstract |
我々は、これまでにシアリルLe^X抗原やLe^X関連糖鎖と反応すると考えられるロータスレクチンが認識する抗原はヒト膀胱癌の浸潤・転移と深い関連があることを示してきた。そして、ロータスレクチンレセプターを抗原としてモノクロナール抗体MM4を作成し、この抗体の認識するエピトープはきわめて強くリンパ節転移巣に発現していることを報告した。本研究の目的はこの抗体の認識するエプトープの塩基配列を決定し、このエピトープと癌の転移との関係をさらに明かにすることであった。そこでモノクロナール抗体MM4を用いて、我々が樹立した肺転移能を有するヒト膀胱癌細胞BOYより作成したcDNAライブラリーをスクリーニングした。その結果、二つの新規のクローンが得られ、MetanestinおよびPapaserineと命名した。現在のところMetanestinは1.2Kb(予想サイズ5Kb)、Papaserineは1.0Kb(予想サイズ3.5Kb)長の部分cDNA塩基配列が得られている。得られた部分cDNA塩基配列およびコードされるアミノ酸配列からこの抗体のエピトープを決定するに至った。MetanestinはPro-X-Pro (Xはある特定のアミノ酸)の2度にわたる繰り返し構造を有していた。また、セリン、スレオニン、プローリンなどのアミノ酸に富んでいることから、ムチン糖蛋白質と考えられた。PCR法を用いてMetanestineに対する抗体を作成し、膀胱癌細胞BOYとの反応性をみたところ、スクリーニングに用いたモノクロナール抗体MM4と同じく60KDaの蛋白質と反応した。従って、Metanestineは目的の蛋白質であると考えられた。また、その抗原の発現を免疫組織学的に検討したところ、その染色性はLe^X関連糖鎖の発現ときわめて相関が強く、正常の膀胱粘膜はほとんど染色されないが、転移リンパ節は強く染色された。また、合成ペプチドを用いてPapaserineに対する抗体を作成した。この抗体はBOY細胞抽出物の100kDaの蛋白質と反応し、免疫染色では膀胱癌の転移性と関連して発現した。以上のことから、MM4のエピトープを有する一群の抗原群の構造を決定することは癌の転移との関係を明かにする上で重要であると考えられた。
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[Publications] Masakazu Takemoto Tsutomu Shirahama: "Metanestin, a newly identified protein, shows metastasis-associated expression in transitional cell carcinoma of the urinary bladder." Int.J.Cancer. (in press).