1997 Fiscal Year Annual Research Report
高度尿道下裂に対する体内各種器官を用いた尿道形成術の実験的研究
Project/Area Number |
08671832
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
林 祐太郎 名古屋市立大学, 医学部, 講師 (40238134)
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Keywords | 尿道下裂 / 尿道形成術 / 全層遊離移植 / 膀胱粘膜 |
Research Abstract |
尿道下裂は尿道口が陰茎の先端に開口せず,陰茎の途中あるいは陰嚢,会陰の高さに開口している先天性の疾患である。 ラビットの陰茎を用いて,尿道およびそれを取りまく尿道海綿体を切除し尿道下裂状態を作成した。つづいて膀胱粘膜を採取し,マイクロサージェリーのテクニックを利用し,チューブ状になるように極細の吸収糸で縫合し,欠損尿道に移植した。また,膀胱と同様の移行上皮組織である尿管,腹膜についても,これをそのまま尿道欠損部に移植し縫合した。ただラビットの陰茎には新尿道を被覆するのに十分な皮下組織は得られなかった。なか新尿道内には3Fの尿管カテーテルを挿入し,術後の尿の排泄はこのステント内を経由させた。 術後数日でこのステントを抜去し,尿道の生着状況を観察したが,移植尿道の生着したラビットを作成することができなかった。他臓器を採取して移植した尿道組織の生着は得られず,壊死状態であった。移植尿道への血行が十分得られていないことが示唆された。 同時期に,膀胱粘膜を用いた尿道形成術を離知性の尿道下裂の2例に臨床応用した。患者は7歳と15歳の男児で,両症例とも過去数回以上の尿道形成術を受けていたが,いずれも成功しておらず,外陰部にはすでに尿道の作成に用いる皮膚の余裕はなくなっていた。両症例とも皮膚の瘢痕化は著明で,皮下組織も豊富ではなかった。術後,7歳児の新尿道は生着せず,移植した膀胱粘膜は強度の萎縮に陥っていた。15歳児には皮下組織の代わりとして,血流の豊富な精巣鞘膜を膀胱粘膜で作成した新尿道と皮膚との間に補填したころ,尿道の末端部分で虚血による狭窄が認められたものの,新尿道の生着が得られた。
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