1997 Fiscal Year Annual Research Report
膀胱癌とN-アセチルトランスフェラーゼの遺伝的多型性との関連性
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08671851
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Research Institution | Unuversity of Occupational and Environmental Health |
Principal Investigator |
稲富 久人 産業医科大学, 医学部, 助手 (00193558)
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Keywords | 膀胱癌 / 尿路上皮癌 / 遺伝的多型性 / N-acetyltransferase2(NAT2) / N-acetyltransferase1(NAT1) |
Research Abstract |
アリルアミンは、尿路上皮癌(膀胱癌、腎盂尿管癌)の発癌化学物質として知られている。アリルアミンは、N-アセチルトランスフェラーゼ(以下NAT)によって代謝されることが知られている。NATには、NAT1とNAT2の2つの酵素があり、NAT2には以前より、活性に関して遺伝的多型があり、NAT2の活性の弱い表現型と膀胱癌発癌との関連性が指摘されてきた。最近、NAT1にも遺伝的多型があることが報告され、癌との関連も指摘されている。今回、尿路上皮癌患者群115例(膀胱癌85例、腎盂尿管癌30例、平均年齢66.9±11.8歳)、健常者群122例(平均年齢62.4±16.6歳)について、NAT1とNAT2の遺伝的多型について検討した。末梢血中の白血球より、ゲノムDNAを抽出し、NAT1とNAT2の遺伝子をPolymerase Chain Reaction(PCR)法により増幅させ、それをRestriction Fragment Length Polymorphism(RFLP)法により、遺伝的多型の解析を行った。NAT1の解析では、発癌に関係すると言われるrapid NAT1遺伝子型の頻度は、健常者群62.3%に対し、膀胱癌群74.1%腎盂尿管癌群73.3%膀胱癌と腎盂尿管癌を合わせた尿路上皮癌群で73.9%であり、健常者に比し、相対危険度(オッズ比)は、それぞれ1.73,1.66,1.71であったが、統計学的有意差は認めなかった。NAT2の解析では、slow NAT2遺伝子型の頻度が、健常者群5.7%に対し、膀胱癌群20.0%,腎盂尿管癌群16.7%,尿路上皮癌群19.1%であり、それぞれのオッズ比(OR)と95%信頼区間(95%CI)は、膀胱癌群4.11,1.62-10.41,腎盂尿管癌群3.29,0.96-11.20,尿路上皮癌群3.89,1.59-9.50と統計学的に有意な差を認めた。また、NAT1とNAT2の遺伝子型の両者をあわせ検討すると、normal NAT1とrapid NAT2併せた群のORを1とすると、rapid NAT1とslow NAT2を併せた群のORは、7.56と増加し、rapid NAT1とslow NAT2の尿路上皮癌発癌危険度に対する相乗効果が示された。
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