1996 Fiscal Year Annual Research Report
前庭器感覚上皮の障害性について(組織培養法による薬剤性内耳破壊術の基礎的研究)
Project/Area Number |
08671965
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
平川 勝洋 広島大学, 医学部・附属病院, 講師 (30144843)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
工田 昌也 広島大学, 医学部・附属病院, 講師 (00179590)
森 直樹 広島大学, 医学部, 助手 (30263677)
|
Keywords | 内リンパ水腫 / 前庭器 / アミノ配糖体系薬剤 / 器官培養 / 卵形嚢斑 |
Research Abstract |
実験動物には、実験的内リンパ水腫を作成するのに最も確実なモルモットを用いた。ネンブタール腹腔内投与による全身麻酔下に、経後頭蓋窩硬膜外法により、手術用顕微鏡下に一側耳の内リンパ嚢を機械的に破壊し、内リンパ水腫を作成した。 内リンパ水腫作成後、2ヵ月の時点でネンブタール腹腔内投与による全身麻酔下に断頭し、直ちに両側耳の前庭器を実体顕微鏡下に摘出した。摘出した内耳前庭器は、耳毒性薬剤としてアミノ配糖体系抗生物質である硫酸ストレプトマイシンを10mg/ml含有する、あるいは含有しない培養液中で5日間器官培養した。培養後、前庭器を固定処理し、内リンパ水腫耳と正常耳との超微細形態の相違を透過型電子顕微鏡で観察し、比較検討した。 前庭器のうち、球形嚢斑は球状窩から剥離摘出する必要があり、培養開始前の操作の影響が強く出た。また、半規管(外側)膨大部陵は培養5日目には、いずれの条件下でも感覚細胞の感覚毛がほぼ完全に脱落した。このため、今回は、実験的内リンパ水腫内耳前庭器の耳毒性薬剤に対する受傷性を、主として卵形嚢斑において検討した。 耳毒性薬剤を負荷していない培養条件下に置ける培養5日目では、卵形嚢斑の有毛細胞の脱落変性が内リンパ水腫耳、正常耳(対照)ともにある程度観察されたが、両耳間で、その程度に差は認められなかった。一方、硫酸ストレプトマイシン10mg/mlを添加した培養液による5日間の培養では内リンパ水腫耳、正常耳(対照)ともに強い有毛細胞の変性所見が観察され、特に内リンパ水腫耳にその傾向が強かった。 これらのことより、内リンパ水腫耳では耳毒性薬剤の影響が強くでることが考えられる。薬剤の濃度の調節、内リンパ水腫作成期間の調整を行って、さらに詳しい検討をする必要があると思われる。
|