1997 Fiscal Year Annual Research Report
網膜神経節細胞における虚血性障害の分子生物学的研究
Project/Area Number |
08672036
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
北野 滋彦 東京女子医科大学, 医学部, 助教授 (30161483)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
茂木 豊 東京女子医科大学, 医学部, 助手 (80266717)
堀 貞夫 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (20143498)
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Keywords | 網膜神経節細胞 / 興奮性アミノ酸 / 虚血 / 熱ショック蛋白 / ミュラー細胞 |
Research Abstract |
72-kDa熱ショック蛋白(HSP-72)の発現が、網膜神経節細胞における虚血耐性に関与するかを検討するため、HSP-72の誘導抑制作用のあるケルセチンを用い、網膜虚血に対する防御作用の抑制を培養網膜神経節細胞(RGC)にて研究した。RGCは、生後7日のラット(Sprague-Dawley rat)の眼球より網膜を摘出し、予め用意した培養ミュラー細胞上で培養した。RGCの同定は、上丘にカルボシアニン蛍光物質を投与して逆行性にRGCを標識し、かつ、電気生理学的にパッチクランプを用い膜電位を測定した。培養RGCを、37℃に保温されている密閉された容器に、0%/O_2、5%CO_2、95%N_2ガスを潅流させて低酸素状態にして、虚血負荷を加えた。培養RGCの生存率は、その回復時のトリパンブルー排除率から算出した。致死下の低酸素負荷によるHSP-72の発現は抗HSP-72抗体による免疫組織化学および免疫電気泳動にて検索した。この致死下の低酸素負荷で前処置した後に、さらに高度の低酸素負荷をした場合の培養RGCの生存率を対照群と比較した。加えて、前処置においてケルセチン(50-200 μ M)を投与した場合の生存率の変化を検討した。致死下の低酸素負荷(10% O_2、3hrs)によるHSP-72の発現は、ケルセチン(100μ M)の投与によって有意に抑制された。培養RGCの高度の低酸素負荷(0%O_2、3hrs)後の生存率は、56±28%であったが、前処置として致死下の低酸素負荷を加えると、83±26%と有意に上昇した。しかし、前処置においてケルセチンを投与すると、63±20%と前処置による培養RGCの生存率の上昇が有意に抑制された。この効果は濃度依存性に認められた。培養RGCにおける虚血耐性は、HSP-72の誘導抑制作用をもつケルセチンの投与により抑制された。この結果から培養RGCの虚血に対してHSP-72は防御的に作用することが示唆された。
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[Publications] Caprioli J., Kitano S., Morgan E.: "Hyperthermia and hypoxia increase tolerance of retinal ganglion cells to anoxia and excitotoxicity." Invest Ophthalmol Vis Sci. 37-12. 2376-2381 (1996)