1997 Fiscal Year Annual Research Report
トランスジェニックマウスを用いた神経原性腫瘍とヒルシュスプリング病の病因論的研究
Project/Area Number |
08672051
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
金子 道夫 筑波大学, 臨床医学系, 助教授 (60152807)
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Keywords | トランスジェニックマウス / E1A / E1B / アデノウィルス / PNET / ヒルシュスプルング病 / 髄芽腫 |
Research Abstract |
筑波大学の深水、杉山等がレニン産生腫瘍を得ることを目的に、ヒトレニンプロモーターとhuman adenovirus type12のE1A・E1B融合遺伝子をヘテロに持つトランスジェニックマウスを作成したところ、予想に反して、マウスに高頻度にprimitive neuroectodermal tumor(PNET)が特異的に発生し、しかもこの発癌はマウスゲノムに組み込まれたアデノウィルス遺伝子による安定した遺伝性を有していた。また、腸管が拡張し、ヒルシュスプルング病に酷似した病態で死亡するマウスも見られた。我々はmatingにより155匹のトランスジェニックマウスを得、PNETの発生頻度、発生時期、発生部位、組織型、免疫組織学的特性、さらに腸管拡張の病態の解明について詳細な研究を行った。調べた155匹中、剖検数153で、そのうち132匹、実にトランスジェニックマウスの85%に特異的にPNETが発生した。PNET発生時期は生後20-39週齢が最も多く、79匹,51%にのぼった。発生部位は多彩で、生後19週齢以前の早期には腹部・骨盤・四肢・体幹発生が80%を占めたのに対し、20週齢以降は頭頸部発生が激増して20週以降発生例の70%に達し、半数以上の55%が脳・頭骨内PNETという高頻度であった。組織学的には脳・頭骨内及び一部の骨盤位発生PNETはいずれもロゼットを形成し、電子顕微鏡所見ではmedullo-ependymal rosetteで上皮性の特徴を有していた。それ以外の部位のPNETは全てundifferentiated typeで、glycogenやneuropilの発達が証明されたが、神経分泌顆粒はほとんど認められなかった。腫瘍抗原はPGP9.5,neurofilamentの発現が両組織型で見られたが、他の神経腫瘍抗原の発現はほとんどなかった。腸管拡張マウスは8匹(5%)であったが、腸管壁内神経節細胞の欠如やアセチルコリンエステラーゼ陽性神経線維の増生はなく、ヒルシュスプルング病ではないことを証明した。主要な腸管神経伝達物質の異常は認められなかった。
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