1996 Fiscal Year Annual Research Report
サイトカインの誘導するカルシウムチャンネル阻害タンパク質の検索
Project/Area Number |
08672127
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
森田 克也 広島大学, 歯学部, 講師 (10116684)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北山 滋雄 広島大学, 歯学部, 助教授 (80177873)
土肥 敏博 広島大学, 歯学部, 教授 (00034182)
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Keywords | インターロイキン-1 / 副腎クロマフィン細胞 / Ca^<2+>チャンネル / Ca^<2+>流入阻害タンパク質 / 細胞死 / 細胞内情報伝達系 |
Research Abstract |
Ca^<2+>は細胞内セカンドメッセンジャーとして細胞機能発現に重要な役割を担っており、電位依存性Ca^<2+>チャンネルおよび受容体作動性Ca^<2+>チャンネルを通るCa^<2+>流入が重要な役割を果たしている。申請者らは、近年副腎クロマフィン細胞でインターロイキン(IL)-1が刺激誘発Ca^<2+>流入を抑制し、本作用はタンパク質合成阻害剤で拮抗されることを見出した。この知見はタンパク質合成を介した新しいCa^<2+>チャンネル調節機構の可能性を示唆するものである。本研究は本作用の詳細な検討と誘導されるタンパク質の同定により、新しいCa^<2+>シグナリング機構の解明とその生理的役割について検索し、以下の成績を得た。 1.IL-1のCa^<2+>流入阻害作用はNa^<2+>チャンネル阻害時にも認められ、さらに受容体作動性Ca^<2+>チャンネル機構、細胞内Ca^<2+>動員系、およびNa^+/Ca^<2+> exchenge機構、Na^+,K^+ATPase等の細胞内Ca^<2+>調節機構には影響せず、電位依存性Ca^<2+>チャンネル阻害剤感受性のCa^<2+>流入を選択的に阻害した。 2.IL-1は副腎クロマフィン細胞でベラトリジンによる細胞死(Ca^<2+>オーバーロードによる細胞死)に対して保護作用を有し、本保護作用はタンパク合成阻害剤で拮抗された。 3.Tyrosine kinase阻害剤はIL-1のCa^<2+>流入阻害作用に拮抗し、加えてIL-1がMAP-kinaseを活性化することを認め、IL-1の細胞内情報伝達系にtyrosine kinase-Map-kinase系の関与が示唆された。またcAMP系、C-キナーゼ系、アラキドン酸代謝系の関与は認められなかった。 これらの成果は、電位依存性Ca^<2+>チャンネルの調節機構に、タンパク合成を介した新たな調節経路の可能性を示唆している。加えて細胞内Ca^<2+>の異常な増加による細胞死、およびCa^<2+>調節機構の障害がもたらす種々な疾患の病因・病態の解明に重大な基礎的基盤を与えるものであり、新しいタイプの医薬品開発の基礎的資料を提供するものである。 又、L-1処置で発現するmRNAのクローニングおよびそれら遺伝子のコードするタンパク質の同定に時間を要しており、Ca^<2+>流入阻害タンパクの実体の解明は困難であった。尚、この点については今後の残された課題であり、現在さらに研究を押し進めている。
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