1997 Fiscal Year Annual Research Report
ムシ歯成因多糖とエナメル質表面相互作用の多面的解析
Project/Area Number |
08672135
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
小川 宏蔵 大阪府立大学, 先端科学研究所, 教授 (60100187)
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Keywords | Streptococcus sobrinus / α-Glucan / Hydroxyapatite / Phenylalanine / 卵白アルブミン / 赤外吸収スペクトル / 蛍光標識 / 蛍光測定 |
Research Abstract |
唾液細菌であるS.sobrinusが産出するα-Glucan(Glu)と、歯の表面に近い疑似六方晶系の結晶構造を持つHydroxyapatite(HAP)との相互作用について、純化学的手法を用いて検討した。Glu(中性・酸両溶液に不溶)のアルカリ溶液にHAP(中性・アルカリ両溶液に不溶)を懸濁した後、アルカリ溶液で洗浄して遊離のGluを除去した試料の赤外吸収スペクトル(IR)を測定した所、HAP中にごく微量のGluが存在することが判明したが、定量はできなかった。そこで、検出感度の高い蛍光(FL)測定をおこなったが、Glu分子の立体構造を損なわないよう還元生末端のみに2-Aminopyridineを結合させて蛍光標識化したGluを用いて、HAPとの相互作用を検討した結果、定量は可能となったが、HAPに対しての重量比は0.2%前後であり、またその再現性はよくなかった。次にHAPを酸溶液に溶解し、Gluのアルカリ溶液を加えて中和し、生成した沈殿物のIRとFLをおこなったが、上記と同様の結果が得られた。試料のアルカリ溶液での洗浄に問題があると考え、Gluに替わるモデル化合物の一つとしてIsomaltose(IM)を用い、中性水溶液でのHAPとの吸着を検討したがこの場合も強い相互作用はみられなかった。一方、歯のプラークは細菌を介して生成するといわれている。そこで、細菌のモデル化合物として、水溶性のPhenylalanineあるいはそのアミノ基をブロックしたBoc-PheとGluとの相互作用、さらに水溶性タンパクである卵白アルブミンとIMとの相互作用を、円偏光二色性を用いて測定したが、強い相互作用の存在を示すようなスペクトルの変化は見られなかった。 以上のことより、虫歯成因のプラークには歯の表面との間には水素結合のような強い相互作用は存在しないと考えられた。今後は歯の脱灰の主要原因とされている乳酸とHAPの反応とそれに対するキチンやキトサンの誘導体などの虫歯防止剤の添加効果を検討する。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] K.Ogawa et al.: "X-Ray Study of Beijeran Sodium Salt" Carbohydr.Res.,. 300. 41-45 (1997)
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[Publications] 小川宏蔵: "(解説)「多糖類の立体構造を見る」" 化学と生物. 35・10. 714-720 (1997)
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[Publications] K.Ogawa et al.: "Conformational Behavior of Chitosan in the Acetate Salt : an X-ray Study" Biosci.Biotech.Biochem.61・7. 1230-1232 (1997)
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[Publications] K.Ogawa et al.: "Molecular and Crystal Structure of Hydrated Chitosan" Macromolecules. 30・19. 5849-5855 (1997)
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[Publications] K.Ogawa et al.: "Chain conformational analysis of beijeran by n-h map calculation" Carbohydr.Res.,. 304. 341-345 (1997)
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[Publications] K.Ogawa et al.: "An Evaluation of Crystal Structure of Mannan I by X-ray Powder Diffraction and Molecular Mechanics Studies" Int.J.Biol.Macromol.21. 243-250 (1997)
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[Publications] K.Ogawa (S.Dumitriu Ed.): "Structural Diversity and Functional Versatility of Polysaccharides" Marcell Dekker,Inc.,New York, 750 (1998)