1996 Fiscal Year Annual Research Report
歯髄電気刺激による頸髄後角ニューロンの応答について
Project/Area Number |
08672141
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
松本 茂二 日本歯科大学, 歯学部, 教授 (90115072)
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Keywords | 頸髄後角ニューロン / 歯髄刺激 / 開口反射 / ラット / ブラディキニン / 横隔神経刺激 / 迷走神経刺激 / 条件刺激-試験刺激間隔 |
Research Abstract |
歯髄電気刺激に応答するラットの頸髄後角ニューロンの多くはC_1レベルで記録ができた。これらのニューロンは後角内のI-V層に分布していた。また、歯髄刺激による痛みの評価は顎二腹筋の筋電図を指標として用いた。いわゆる開口反射の閾値の1-3.5倍の刺激で、C_1ニューロンのスパイクと筋電図の振幅の大きさは、閾値が増すと両者ともに増加した。歯髄刺激に応答する多くのC_1ニューロンは、頸部、顔面部および上肢の皮膚の触刺激あるいはピンチ刺激にも反応する広作動域(WDR)ニューロンであった。それらの皮膚刺激に対する応答範囲は夫々のニューロンで差異が認められた。伝導速度は平均で3.9m/secであった事から、歯髄刺激による脊髄後角ニューロンの興奮は歯髄内のAδ線維の興奮によって伝達されていることが判った。加えて、歯髄刺激に応答するいくつかのニューロンは歯髄内へのブラディキニン投与あるいは求心性の横隔神経電気刺激でも興奮した。従って、歯痛あるいは狭心症に併発しておこる関連痛は同じ脊髄後角ニューロン(主に記録したC_1ニューロン)によって投射されていることが考えられた。記録した多くのC_1ニューロンは頸部の、迷走神経電気刺激でも興奮した。迷走神経が歯髄刺激によるC_1ニューロンの応答を如何に変調するかを検討する為に、条件刺激-試験刺激間隔(C-T interval)を20-200msecに変化させて調べた。C-T intervalが短い場合(20-100msec)は、興奮の反応が多くみられた。この反応に関しては条件刺激による興奮が持続している可能性があり、さらに検討を必要とした。一方、C-T intervalが長くなる(120-200msec)と抑制反応が見られた。この反応は求心性の迷走神経刺激によって内因性疼痛抑制系が賦活された結果生じるのであろう。以上の結果から、歯髄刺激によって脊髄後角ニューロン(主にC_1レベル)は興奮し、何らかの形で歯痛による侵害受容伝達を行っていることが示唆された。
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