1996 Fiscal Year Annual Research Report
口腔癌の顎骨浸潤に対するビスフォスフォネートの応用に関する研究-放射線治療との併用効果ならびに骨への障害について-
Project/Area Number |
08672307
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
佐々木 朗 岡山大学, 歯学部・附属病院, 講師 (00170663)
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Keywords | 口腔癌 / 顎骨浸潤 / 破骨細胞性骨吸収 / 放射線治療 / ビスフォスフォネート |
Research Abstract |
口腔領域は周囲を骨に囲まれているという解剖学的特徴から口腔領域悪性腫瘍の骨への浸潤破壊はしばしば認められ,治療法や手術範囲の決定,また予後を左右する大きな負の要因である.申請者は癌の骨への浸潤増殖は破骨細胞性骨吸収に引き続いて起こることに着目し,強力な骨吸収阻害剤である新世代ビスフォスフォネート(BP)による破骨細胞性骨吸収の抑制が癌の顎骨浸潤や顎骨での増殖を抑制することを示し,臨床応用への基礎的検討を進めている.本研究ではBP投与と放射線療法(RT)との併用療法の臨床応用への可能性を探るべく,BP投与に対するRTの骨への影響を検討した. 対照群,RT群,BP投与群,RT+BP投与併用群の4群に分けて検討した.RTは隔日,一回2Gy(総量10Gy)の分割照射を行い,BPは1日1回6μgを週4回皮下注射し,14日後に大腿骨をX線学的,組織学的に検討した.RT群は,対照群,BP投与群に比べ体重減少を認めたが,併用群との間に差は認めず,この体重減少は放射線宿酔による食餌量の低下や骨髄障害に起因したものと考えられた.X線学的にはBP投与に対するRTの影響は認めなかった.組織学的には,RT群で骨髄腔内の骨髄細胞は消失し出血と空胞変性を認めたが骨梁は保たれ骨芽細胞も維持されていた.BP投与群では,骨端部において多数の骨梁新生と破骨細胞の消失を認めた.一方,RT+BP投与併用群にはこの両者の所見が認められたが,骨端部の骨梁新生は,BP投与群より僅かに抑制された.すなわちRTは,BPによる骨梁新生をやや抑制するものの明確な放射線性骨壊死を惹起するなどの影響はないことが示唆された.以上より,癌による骨破壊を抑制するBPの効果は,従来用いられている癌細胞を直接標的とした放射線照射による影響をうけず,併用療法による癌の顎骨への浸潤破壊に対する抑制効果が期待される.
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