1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08672430
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
原野 一誠 熊本大学, 薬学部, 教授 (30037593)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
衛藤 仁 熊本大学, 薬学部, 助手 (70221116)
松岡 俊和 熊本大学, 薬学部, 助教授 (50150545)
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Keywords | Cyclopentadienone / Hydrogen bonding / CT complex / Phenol / Stereoselectivity / Pericyclic reaction |
Research Abstract |
一般にペリ環状反応は非局在化した遷移状態を経由するため,溶媒による反応制御は困難であることが知られている.しかしこれに対して,申請者らは,フェノールの様な会合性プロトン溶媒が,ペリ環状反応における反応性および周辺,配向選択性に影響を及ぼす結果を得た.今回,モデル反応として逆電子要請型の反応挙動を示すシクロペンタジエノン類を用いた.まず,不活性オレフィン類との周辺環状反応においては,付加反応で4-14倍,シグマトロピー及びキレトロピー反応においても大きな反応速度の加速が認められた.また,エンド/エキソ立体異性体が混在する反応系では,エキソ体が優位に生成した.さらに,不飽和中員環化合物との連続ペリ環状反応(付加反応に引き続いて起こるシグマトロピーあるいはキレトロピー反応)では,ペリ選択性を劇的に変化させる結果が得られた.これらの反応制御機構を解明するために各種スペクトル法を用いて詳細な検討を行った結果,紫外可視,NMRスペクトル法より基底状態において,反応基質-フェノール間に水素結合および電荷移動錯体の形成が確認され,これらの複合体が反応を制御する上で重要な因子であることが示唆された.その際,シクロペンタジエノン-フェノール複合体の単離を試み,IR,固体NMRスペクトルにより複合体形成の確認を行った.さらに,無極性溶媒における活性化エネルギー,エントロピー変化の比較から,遷移状態においてもフェノール複合体が介在していることを示唆する結果が得られた.水素結合や電荷移動のような弱い相互作用の集積を利用することにより,これまで困難とされていた熱ペリ環状反応における反応性および各種選択性を制御する可能性を示せたことは興味深い.申請者らは,さらに,シクロペンタジエノン類以外の系においてもフェノール性溶媒のペリ環状反応制御について検討を行っている.
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Masashi Eto: "Sequential Pericyclic Reaction of Unsaturated Xanthates. Intramolecular Cycloaddition Selectivity of the 2,4-Alkadienyl 2-Alkenyl Sulfides" Tetrahedron. 52. 13909-13918 (1996)
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[Publications] Masashi Eto: "Retro-Alkylthio-Ene Fragmentation of Allylic Dithiocarbonates" Tetrahedron Lett.37. 2445-2448 (1996)
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[Publications] Tamaki Jikyo: "p-Chlorophenol as a Solvent for Cycloaddition of Cyclopentadienones with Nonactivated Olefins" Org.Prep.Proced.Int.(in press).