1997 Fiscal Year Annual Research Report
キラルな放射性薬剤を用いた中枢ニコチン受容体機能のインビボ解析
Project/Area Number |
08672474
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
佐治 英郎 京都大学, 薬学研究科, 教授 (40115853)
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Keywords | ニコチンレセプター / 脳 / 光学異性体 / 放射性薬剤 / レセプターアッセイ / アルツハイマー病 / 基底核 / インビボマッピング |
Research Abstract |
本研究は、記憶や学習との関連性が注目されている中枢ニコチン受容体機能を対象として、放射性探索子およびそれによる本機能の無侵襲的インビボ解析法の開発、さらにこれを応用してアルツハイマー病などの脳神経疾患の診断法の開発や病因の解明に結びつけることを目的とする。特に、本研究では、キラルな化合物には光学異性体が存在し、その両者は体内分布動態に影響する分子量、分子サイズ、脂溶性などの物理化学的性質は同じであるが、レセプターとの親和性に大きな差があるものがあることに着目して、このキラルな放射性薬剤を設計し、両者の対象部位での集積量の差から対象レセプター機能をインビボで評価することを計画した。まず、放射性機能探索子としては、脳移行性が高く、ニコチンレセプターに光学選択的に結合するニコチンを母体化合物として選択し、この群の構造とレセプター相互作用との相関に関するデータに基づいた考察により従来にないピリジン環の5位に放射性ヨウ素を導入した(S)-5-ヨードニコチン((s)-IN)を開発した。本化合物は、そのエナンチオマーであるR体よりも約80倍高い中枢ニコチン受容体親和性を示した。さらに、本化合物はラットに靜注後ニコチンレセプターの密度に応じた脳内局所集積を示し、インビボでも脳内のニコチンレセプターに結合していることが示された。さらに、脳内のマイネルト核にアセチルコリンの合成を阻害する3-ブロモピルビン酸(BPA)を局所投与した動物をアルツハイマー病態モデルと考えて作成し、この動物での(s)-INの動態を調べたところ、BPA投与早期には大脳皮質での(s)-INの取り込みが増加したが、7日後には減少することが認められた。この減少はインビトロレセプターアッセイの結果とも一致した。以上の結果から、本化合物は中枢ニコチンレセプター機能のインビボ解析に有効な性質を示すとともに、さらにアルツハイマー病などの核医学診断への利用の可能性も示された。
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