1997 Fiscal Year Annual Research Report
コリン(エタノールアミン)キナーゼの細胞増殖における役割に関する研究
Project/Area Number |
08672503
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
石館 光三 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教授 (40014287)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松尾 律子 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助手 (00126260)
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Keywords | コリンキナーゼ / エタノールアミンキナーゼ / 細胞増殖 / ホスホコリン / ホスホエタノールアミン / cDNAクローニング / リン脂質代謝 |
Research Abstract |
我々を中心としたこれまでの研究から、動物組織におけるコリン(エタノールアミン)キナーゼ(CKおよびEK)は少なくとも3種のアイソザイムとして存在する事実が示唆されている。即ち、1つは50kDaCK、他の1つは42kDaCK/EKと呼ばれるものであり、この両者はconstitutive formsとして種々の組織において発現している。一方、第3のCK/EKは細胞の増殖刺激あるいは細胞障害性毒物の投与によって主として肝細胞で新たに発現されてくる、いわゆる誘導型CK/EKであるがこのものの本体は現在まだ不明である。最近、細胞増殖刺激の初期過程において、DNA合成の亢進に先立って細胞内CK/EKの活性化(誘導)とその反応産物であるホスホコリン(ホスホエタノールアミン)の蓄積が観察され、これらの産生を抑制するとDNA合成も亢進されない事実が明らかにされた。この反応にはおそらく誘導型CK/EKが関与しており、またホスファチジルコリン(エタノールアミン)の生合成とは直接関連していないと思われる。我々は誘導型CK/EKの生理的役割を分子レベルで明らかにする目的で本アイソザイムの純化を精力的に進めたが、他の2種のconstitutive CK/EKに比べ本酵素は蛋白化学的に極めて不安定であり、現在までその純化には成功していない。一方、ラット腎より単一化に成功した42kDaCK/EKについて我々はアミノ酸配列の情報をもとに今回そのcDNAクローニングに成功し一次構造を決定した。その結果、42kDaCK/EKのアミノ酸配列は既に他の研究グループによってクローニングされた50kDaCKと役60%のホモロジーしか示さず、両者は別個の遺伝子産物であることが実証された。他方、両者のアミノ酸配列中には高度に保存された8つの共通ドメインが存在する事実も判明し、そのうちの1つ(domain-6)には他のホスホトランスフェラーゼにも共通して存在するいわゆる Brenners consensus sequenceが見つかった事実から、この部分が活性に必須な部分と推定された。また大腸菌による発現実験の結果、N末側の2つの共通ドメインも活性発現に重要な部分であると判明した。これらの結果を踏まえて、現在ラット肝由来のサブトラクションライブラリーを、既に構造の判明した50kDaCKおよび42kDaCK/EKの高度保存配列部分から作成したプローブを用いてスクリーニングする方法により、誘導型CK/EKcDNAの単離を精力的に進めている。
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[Publications] Chieko Aoyama: "Complementary DNA sequence for a 42 kDa rat kidney choline/ethanolamine kinase." Biochim.Biophys,Acta. 1390(1). 1-7 (1998)
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[Publications] Kozo Ishidate: "Choline/Ethanolamine kinase from mammalian tissues." Biochim.Biophys.Acta. 1348(1-2). 70-78 (1997)
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[Publications] Ujiro Tanaka: "Concomitant gene expressions of perforin and Fas-ligand in the liver of chronic hepatitis C." Hepatology. (in press). (1998)
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[Publications] 石館光三: "コリンの体内代謝に関与する酵素、代謝中間体などの解説" 生化学辞典 第3版(東京化学同人). 日本生化学会編(印刷中). (1998)
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[Publications] 石館光三: "ホスファチジルコリン,ホスファチジルエタノールアミンの合成" 生物薬科学実験講座I.生体構成成分と高分子.広川書店. (印刷中). (1998)