1997 Fiscal Year Annual Research Report
ウシ肝臓ジヒドロジオール脱水素酵素の構造と触媒機能の関連
Project/Area Number |
08672509
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
寺田 知行 大阪大学, 薬学部, 助手 (50135737)
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Keywords | ジヒドロジオール脱水素酵素 / ポイントミューテーション / 立体構造 / 触媒機構 / コンピューターシミュレーション / 補酵素結合 |
Research Abstract |
ウシ肝臓に、環境中の多環式芳香族炭化水素の発癌性代謝中間体の代謝酵素であるジヒドロジオール脱水素酵素を見いだした。その部分のアミノ酸配列をもとにDNAプローブを作製してウシ肝臓cDNAライブラリーをスクリーニングし、ウシ肝臓ジヒドロジオール脱水素酵素でcDNAクローンを単離した。このcDNAクローンをpET-28a発現ベクターに組み込み、腸菌でのタンパク質の大量発現及び簡便かつ高収率な精製法を確立した。この精製発現酵素は、基質特異性や阻害剤感受性などの観点から肝臓中の酵素と同一であった。メガプライマーPCR法により、Asp-50、Tyr-55、Lys-84やHis-117に変異を導入した変異体酵素酵素を作製して諸性質を詳細に検討した。これらに加えて、Cys-145やCys-193にも変異を導入して、酵素活性、阻害剤感受性、基質との親和性、補酵素との結合定数あるいは至適pHなどを測定することによりこれらのアミノ酸残基が活性に必須であることを明らかにした。さらに、既に結晶構造が解析されているヒトやラットaldose reductaseなどのデータをもとに、各種コンピューターソフトを用いて野生型及び変異酵素の立体構造の推定を行った。活性変動や推定立体構造の解析の結果より、Asp-50,Tyr-55,Lys-84並びにHis-117は、特異な立体構造であるα8,β8-barrel構造の内側の基質あるいは補酵素の結合が予想される部位に局在し、補酵素から基質への水素の転移に重要なproton relayに極めて重要なアミノ酸残基であった。さらに、Cys-145及びCys-193は、SH-修飾試薬に対して極めて感受性が高いが酵素活性発現には直接関与していなかった。前者は、酵素のC-末端に近い部位に表在性で存在し、SH-修飾試薬による修飾は酵素活性に影響しない、また、後者は、補酵素結合部位と予想されるクレフトに局在しており、この残基の修飾は、補酵素の結合を阻害することにより活性低下を惹起していることが推定できた。
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