Research Abstract |
活性酸素調節剤は,高分子量のスーパーオキシドジスムターゼ(SOD),カタラーゼ(CAT)等の活性酸素消去酵素群と低分子量のグルタチオン(GSH),システイン等の抗酸化物質の分類できる.これらの物質は互いに協調し酸素ストレスから細胞を防御しているのみではなく,特にGSHは異物と抱合体を形成し,多剤耐性蛋白質(MRP)による異物の細胞外排泄に関与している.そこで,活性酸素消去酵素や低分子抗酸化剤等を利用し,細胞内GSH濃度の調節を介する異物代謝排泄の制御が可能かを評価する研究を行った.1.ヒト鼻咽喉癌細胞(KB),乳癌細胞(MCF-7),結腸腺癌細胞(Caco-2)の細胞内GSH量は,ブチオニンスルフォキサミン(BSO)により,用量依存的,時間依存的に低下した.またフォロンにより細胞内GSH量は増加する傾向が,ニトロアセチルペニシラミンによっては低下する傾向が認められた.しかし,アセチルシステイン,過酸化水素は細胞内GSHに変化を及ぼさなかった.一方,細胞内のSOD, CATはBSOやフォロンの処理によっても変動しなかった.2.抗癌剤である^3Hービンクリスチン,細胞内でGSH抱合体を形成すると報告されている^<14>C-プロモベンゼン,グルクロン酸抱合体を形成するといわれている^<14>C-αナフトールをKB細胞に取り込ませた後,その細胞外への排泄に対するBSO,フォロンの影響について検討したが,両試薬とも排泄量の変動を引き起こさなかった.今後,MRPを過剰に発現しているKB細胞を用いて検討し,野性型KB細胞と比較する予定である.3. SODの一種である細胞外型SODに遺伝子変異が存在することはすでに報告してきたが,この変異により,ヘパリン親和性,内皮細胞結合性やプロテアーゼ感受性が変化することが判明し,細胞外型SODがもつ抗酸素ストレス防御能の変化が疾患の発症,進展に関係している可能性および活性酸素調節剤が関与する異物代謝排泄が変動している可能性が示唆された.
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