1996 Fiscal Year Annual Research Report
薬物動態解析における最小相対エントロピー法の有用性の検証
Project/Area Number |
08672609
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
網崎 孝志 島根大学, 総合理工学部, 助教授 (20231996)
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Keywords | 薬物動態 / パラメータ推定 / 相対エントロピー / 最小二乗法 |
Research Abstract |
最小相対エントロピー法(MRE)は,観測値と理論値の一般化相対エントロピーを最小化することにより,パラメータを推定する手法である。本研究の目的は,観測値の誤差分散とMREの推定性能の間の関係を明らかにし,MREがどのような薬物動態解析に有効であるかを明確にすることにある。 今年度は,まず,MREの推定性能を数値実験により検討した。比較対象とした推定法は,ELS,最小二乗法(OLS),そして観測値の逆数あるいはその二乗を重みとする重み付け最小二乗法(WLS)である。その結果,観測値の分散が理論値に比例する場合にはMREが最も性能がよく,観測値の標準偏差が理論値に比例する場合にはELSが最も優れていることが確認された。また、概して,MREとELSの推定性能は同等であり,両者はWLSよりも優れていた。以上の結果は,第64回日本統計学会および第12回Population Pharmacokinetics研究会で発表した。 次に,上記の性質を理論的に説明することを試みた。その結果,MREは,数学的には,Poisson分散モデルを用いた反復重み付け最小二乗法(IRLS)あるいは一般化最小二乗法(GLS)と同一であることが判明した。このことは、従来、明確にされていなかったIRLSの目的関数が相対エントロピーに一致することを明らかにした点で意義深い。さらに,再度,数値実験を行った結果,MREの推定性能はPoisson分散モデルを用いたIRLSとほぼ同一であるが,その他の分散モデルを用いたIRLSよりも優れていることが明らかになった。以上のことは、相対エントロピーを最小化する手法,すなわち,MREおよびPoisson分散モデルを用いたIRLSが有望な推定法であることを示唆している。
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