1996 Fiscal Year Annual Research Report
虚血性腸障害の発症および修復へのエンドセリン-NO系関与の解析と治療薬の開発
Project/Area Number |
08672616
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
山下 樹三裕 長崎大学, 医学部, 助教授 (50192399)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷山 紘太郎 長崎大学, 医学部, 教授 (70030898)
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Keywords | ischemia-reperfusion / ileal pouch / NG-nitro-L-arginine methyl ester / nitric oxide / lactate dehydrogenase / rat |
Research Abstract |
虚血性腸炎の成因については、高血圧や動脈硬化など血管側の因子だけでなく腸管側因子の関与も指摘されているが、まだ不明な点が多い。我々は、これまでに虚血性脳神経細胞障害の発症ならびにその修復過程にエンドセリン(ET)系および-酸化窒素(NO)系が関与していることを報告し、腸管においてもET系およびNO系の変動が虚血性腸炎の発症あるいは修復に重要な役割を担っている可能性が考えられる。そこで、我々は虚血性腸炎モデルラットを作製し、虚血性腸炎へのET系およびNO系の関与について検討し、さらに虚血性腸炎の薬物による治療の可能性を追求することを目的とした。まず、ラットをハロタン麻酔下に腹部正中切開を加え、回腸部の両端にチューブを接続し、回腸部を温生理食塩水にて灌流できるようにした。その後、前腸間膜動脈および後腸間膜動脈の各岐始部を動脈クリップにて1時間クランプし、虚血前および虚血血流再開通後経時的に温生理食塩水を腸管内に灌流し、灌流液中のNO産生量をNO測定装置により経時的に測定した。その結果、血流再開通後より著明なNO産生量の増加が3時間程認められ、その後徐々にNO産生量は減少していった。一酸化窒素合成酵素阻害薬であるNAMEの虚血前投与により、虚血血流再開通後のこのNO産生量の増加は用量依存的に抑制された。また、腸管障害の度合いを調べるために灌流液中の乳酸脱水素酵素(LDH)活性を測定した。その結果、NO産生量の動きとほぼ一致したLDH活性の増加が認められ、このLDH活性の増加もNAMEの虚血前投与により抑制された。したがって、一過性虚血によりNO産性系が活性化され、産生されたNOにより腸管組織が障害を受けたと考えられ、虚血性腸管障害にNO系が重要な役割を担っているものと推測される。
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