Research Abstract |
在宅ケアを支える訪問看護活動は,平成6年より高齢者に限らず一般在宅患者に対象が拡大され,訪問看護における医療ニードは高くなることが予測される。看護婦は「傷病者若しくはじょく婦に対する療養上の世話又は診療の補助をなすことを業とする」ものであるが,狭義には,療養上の世話は,医師が行うのでなくとも衛生上の危害を生ずるおそれのない行為,すなわち医師の指示を要しない行為であって医療行為を含まない行為であり,医療行為は医師の指示を要する行為であってと診療の補助行為とみなされている。在宅ケアの対象が拡がってきた今日,療養上の世話と医療行為をきり離しては,看護ケアの実施が困難な状況が増加しつつある。このような訪問看護の状況と似かよった状況が考えられる肢体不自由児を対象とする養護学校における障害児のケアの実際をY市の養護教育総合センターの指導主事に面接し聴取した。 すべて国民は,その能力に応じてひとしく教育を受ける権利を有しており,養護学校では,個人の障害の状態に応じた教育を行っている。なかでも主に重度・重複障害をもつ肢体不自由児を対象にする肢体不自由養護学校では,児童生徒の健康状態,障害の状態から医療との連携,医療的配慮が重要である。養護学校において障害児の養護・訓練の指導にあたる養護教員は,医師の指示はないが学校医,臨床指導医,保護者と連絡を密にしながら,医療的ケアを行っており,その行為を家庭で行う生活行為の一部と位置づけている。ケアの内容は,児童生徒の障害の状態に応じて,健康状態の観察,摂食行動の養護・訓練,経管栄養の注入・管理,導尿の指導,体位交換の実施,気管内吸引などである。重度・重複障害をもつ肢体不自由児童生徒の学校内教育の実施には,医療内ケアを含む生活行為に関するケアが必要であり,養護教員が学校生活において医療的ケアを実施している。Y市では,これまで学校における死亡事故や訴訟などの問題は生起していない。
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