1996 Fiscal Year Annual Research Report
看護・人間工学的な視点による高齢者自立支援椅子の開発
Project/Area Number |
08672691
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | College of Nursing Art and Science, Hyogo |
Principal Investigator |
川口 孝泰 兵庫県立看護大学, 看護学部, 講師 (40214613)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
根本 清次 兵庫県立看護大学, 看護学部, 助教授 (40218277)
小河 幸次 北海道東海大学, 芸術工学部, 助教授 (60169183)
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Keywords | 自立支援椅子 / 高齢者 / 人間工学 / 日常生活動作 |
Research Abstract |
本年度は、日本の文化・風土の中における高齢者生活支援家具としての椅子の可能性を探るために、高齢者の住生活での姿勢と、それらを前提とした椅子のニーズに関する調査を行った。研究の方法は、日常生活での生活動作・姿勢に関する質問、および椅子の使われ方について、65歳以上の高齢者を対象に、対話形式で行う半構成的な聞き取り調査を行った。対象となった高齢者は男性21名、女性73名、計94名である。調査対象者の日常生活動作の支障の有無は、45.2%の人が何等かの障害を持っている人であった。中でも膝や腰の障害が一番多くみられた。基本的な日常生活行動である「寝る」「排泄する」「食べる」際の様式を聞いたところ、「寝る」際にはベッドの使用者が16.1%、布団が83.9%と布団の使用者が多くみられた。とくに布団使用者に対する聞き取り結果では、布団の上げ下ろしがつらい動作であると答える人が多くみられた。ベッド使用者の聞き取り結果では、布団に比べると動作が随分と楽になったと答える人が多くみられた。「排泄する」をトイレ様式からみてみると、和式が40%、様式が60%と、様式トイレの使用者が多くみられました。「食べる」については、床に座って食べるという人が、26.6%に対して、椅子に座って食べるという人は73.4%であった。 住まいにおいて「くつろいでいるとき」や「テレビを観るとき」の姿勢は、臥位(横になる)が最も多く、ついで床座位(寄り掛かっている)、椅座位は12.1%で、椅座位の多くはソファーに座るであった。「テレビを観るとき」の姿勢は床座位が67%と最も多く、臥位(横になる)は16%、椅座位は17%であった。「食事する」「テレビを観る」場面においては、動作障害の有無と姿勢との間に関連がみられた。「食事する」場面での椅座位の割合は、動作障害のある人の方が、無い人よりもほぼ1割多く、「テレビを観る」場面では約2割多く、動作障害があると椅座位をとる傾向がみられた。生活動作の中で、高齢者がシンドイ動作として挙げたものは「腰を曲げる」「立ち上がる」動作で、ほとんど腰や膝の障害に起因するものであった。高齢者が椅子を使用する場面は、「食事のとき」や「テレビを観るとき」などが多くみられた。椅子が必要だと思う場所とも一致していた。欲しい椅子では、「無し」と答える人が半数以上で椅子に対する要求がきわめて低い結果となった。 今回の調査から、動作に障害がある人に臥位や床座位よりは椅子を用いてくつろぐ傾向がみられるのは、臥位や床座位から立位に移行する動作が身体に大きな負担をかけることに起因するからであると考えられた。また今回調査対象とした高齢者は、約半数の人が動作に障害が有ると答えた。老化に伴う動作障害が〈臥位から立位〉、〈座位から立位〉への移行を困難にしていることから推測すると、日本の文化的な背景に伴った生活スタイルや起居様式は、ある意味に於て、高齢者の動作・行動の可能性を阻害しているとも考えられる。今後、住まいの中で、生活動作の支援家具としての椅子の開発と導入は、高齢者の自立を支援していくという側面からも、たいへん重要な役割を担っていると考えられる。
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Research Products
(2 results)