1997 Fiscal Year Annual Research Report
今世紀前半のアメリカン・ジャーナル・オブ・ナーシングにみる"看護とは"の系譜
Project/Area Number |
08672701
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Research Institution | Japanese Red Cross College of Nursing |
Principal Investigator |
小玉 香津子 日本赤十字看護大学, 看護学部, 教授 (40178281)
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Keywords | 看護史 / アメリカン・ジャーナル・オブ・ナーシング / フロレンス・ナイチンゲ-ル / ヴァージニア・ヘンダーソン |
Research Abstract |
平成8年度にひき続き分析対象誌AJNの収集に努めたが、一部覆刻を含め、1901年から1930年までを今年度手元にそろえるに止った。平成10年4月中には1950年までの分を入手できる見通しである。 nursingおよびnursing professionを検索語とし、この2つを正面から問う論考を取り出して"看護とは"の経時的な理解の深まりを探った。昨年度の本概要では感触を記すに止ったが、"看護とは"がフロレンス・ナイチンゲ-ルのそれから出発したという直接的な証拠はない。しかし、看護についての彼女の考えのうち、看護ならびに看護婦の重要特性として、virtue、あるいはmorals、あるいはethics、あるいはetiquetteを主唱する行き方が明らかに受け継がれてきた事実は、今世紀前半のAJN誌にみることができた。これはナイチンゲ-ルによる"看護とは"の限られた一側面のみの伝承を示す証拠であり、また、今世紀後半には見失われていくことになる、看護ならびに看護婦の特性である。 virtue等が重視された背景には、19世紀半ば以来、看護婦が単独で活動する特約看護が優勢であり続けた事情のあることを誌上に確認することができた。 "看護とは"に家政の気配が濃厚である事実は、ナイチンゲ-ルの『看護覚え書』、なかでも"赤ん坊の世話"を付録にもつ最後の版、『労働者階級のための看護覚え書』の普及が関係している可能性がある。 nursing careという言葉が誌上日常的に使われるようになるのは1950年に近づいてからである。ヴァージニア・ヘンダーソンの看護観はこのnursing careについての論であることから、1955年に発表された彼女の看護の定義は、それをさかのぼることさほど遠くない時期に開発されたと想像できる。
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