1997 Fiscal Year Annual Research Report
経済的側面からの院内感染防止対策の検討-経済的負担と労働時間の実態調査から-
Project/Area Number |
08672709
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Juntendo Medical College of Nursing |
Principal Investigator |
田中 道子 順天堂医療短期大学, 看護学科, 助教授 (80279629)
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Keywords | 院内感染 / メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 / 感染防止対策 / 経済的側面 / 看護婦 / 労働時間 / 実態調査 |
Research Abstract |
1.研究目的:院内感染による感染症の検査・治療及び感染防止の管理に要する費用を調査するとともに、看護婦の感染防止活動に要する時間を調査することによって、院内感染防止対策を検討する。 2.研究結果の概要:今年度の調査対象はM病院に入院中、MRSA感染症を併発して個室隔離をした患者15名で、その平均隔離日数は75日であった。15名の背景は60〜94才の高齢者で、ほとんどが慢性疾患をもつ寝たきりの患者であった。その患者に対して感染防止のために使用した物品の費用は患者一人当たり平均2070円/日であった。それに病院が負担する個室料金を加えると、感染管理に要する病院負担額は患者一人当たり平均2万1284円/日になった。ただし、対象となったMRSA感染患者のほとんどが肺炎の治療目的で入院し、MRSA肺炎を併発したものである。従って、MRSA感染症だけに要した検査・治療費を算出するためには通常の肺炎の平均治癒期間を求める必要がある。現在、国内・外の文献及びM病院での肺炎の平均治癒期間を調査中である。また、看護婦が感染防止活動に費やした労働時間は約90分/日であった。それをM病院の看護婦の平均賃金で換算すると、2214円/日となった。従って、個室隔離の平均日数の75日を掛けると、患者一人当たりの総経費は159万6300円となった。一方、M病院においては1995年に院内感染防止策を改善したので、その防止策が院内感染発生率の低減化に結び付いているかどうかを調査した。その結果、9.6%(1993年)から6.7%(1997年)に減少したことが明らかとなった。この2.9%の減少のうち、その1/3がMRSA感染症だと仮定した場合、M病院の一年間の入院患者延数が約3000名なので、その1%(30名分)の感染管理費用約4800万円が節約出来たことになる。今後は高齢者で慢性疾患をもつ寝たきりの肺炎患者に対する感染防止対策を検討することによって、さらに経済的効果をあげることが可能と考える。
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