1998 Fiscal Year Annual Research Report
中枢神経細胞の運動性変性予防と回復促進に関する運動処方作りの基礎的研究
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08680109
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
藤墳 規明 名古屋工業大学, 工学部, 教授 (60101268)
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Keywords | 雌ラット / 頚動脈閉塞 / 海馬体アンモン角CAl / 細胞変性 / アルギニン染色 |
Research Abstract |
これまでの研究において、われわれは、雌ラットに持久的水泳運動をトレーニング形式で負荷すると、海馬体神経細胞に変性が起き、この変性の原因が運動性の低酸素、低グルコース症による可能性を明らかにすると共に、この運動性細胞変性が空間認知学習能の低下をもたらすことを報告した。 本研究では、低酸素、低グルコース性の海馬体細胞変性の薬理学的予防法の検討を試みた。最近、神経成長因子様の作用や、神経細胞死の抑制、さらには、血管新生や障害筋細胞の修復に効果を発揮することが報告されている人工合成産物であるMS-818の細胞変性の抑制効果を片側頚動脈閉塞モデルラットを用いて検討した。 成熟雌ラット(Wistar系)を対象に右側頚動脈閉側群と右側頚動脈非閉側群(シャム対照群)とに大別した。閉塞群はさらに薬物投与群と薬物非投与群に二分した。薬物投与群には、一日一回、体重1kg当たり5mgのMS-818を腹腔内に3カ月間に渡り投与した。薬物非投与群とシャム対照群には生理食塩水を投与した。頚動脈閉塞術は、麻酔下にてナイロン縫合糸にて右頚動脈を結縛し閉塞した。3群とも3カ月間、定温と明暗サイクルを備えた飼育室で飼育した後、灌流固定を施し脳切片を変性細胞を特異的に染色するアルギニン染色法に供した。薬物投与の効果は、海馬体アンモン角CA1における細胞層1mm長当たりの正常細胞数を比較することによった。なお、腹腔内投与した薬物のアンモン角CA1における濃度を確認するため、薬物投与後にアンモン角CA1から細胞外液を透析法により回収し、高速液体クロマト法により分析した。 シャム対照群における正常細胞は、220個/Inln、薬物投与群は、150個/mm、非投与群では80個/mmであった。3群間の正で17細胞数には有意差が認められた。すなわち、頚動脈閉塞術によりアンモン角CA1領域において、低酸素・低グルコース症によると考えられる細胞変性が発生する。ところが、MS-818投与により、この変性が軽減、あるいは抑制された。薬物投与後、アンモン角CA1領域において約12時間に渡ってMS-818が検出でき、薬物投与後90分の時点では、投与濃度の約1/100濃度のMS-818が検出できた。このことは、薬物投与群での正常細胞数が非投与群に比べて高い値を示したのは、MS-818投与の効果と推察された。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Murakami,T.: "Induction of nuclear respiratory factor-1 expression by an acute bout of exercise in rat muscle" Biochemical et Biophysica Acta. 1381. 113-122 (1998)
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[Publications] Fujitsuka,N.: "Intramembrane structure of the sensory axon terminals in bullfrog muscle spindle" Anatomical Record. 252. 340-354 (1998)
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[Publications] Tsukamura,M.: "Dietary maltitol decreases the increase of 1,2-dimethylhydrazine-induced cecum and proximal colon tumors in rats." Journal of Nutrition. 128. 536-540 (1998)
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[Publications] Nakai,N.: "Insulin activation of pyruvate dehydrogenase complex is enhanced by exercise training" Metabolism. (in press).
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[Publications] 今泉和彦・石原昭彦: "最新運動生理科学実験法" 大修館書店, 280 (1998)