現代中国における商業システムの変容

1997 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 08680163
• Research Institution: Kyoto University
• Principal Investigator: 石原 潤 京都大学, 文学研究科, 教授 (70080265)
• Keywords: 中国 / 商業システム / 農村 / 社会主義化 / 市場経済化 / 自由市場 / 供銷社 / 個体戸

Research Abstract

本年度は、主に農村地域における商業システムの変貌に関する資料収集とその分析をおこなった。全国の1級行政区(省・自治区・直轄市)毎の統計年鑑及び入手可能な県志・市志類、地域別の地図類を入手し、1級行政区別、及びその内部の地区・県別の商業の動向を統計的に分析した。収集されたデータの整理・統計分析・地図化のために学生アルバイトを利用した。特に詳細な分析の対象地域としては、研究代表者が国際学術研究で現地調査が可能であった、河南省登封市域(旧登封県域)を選択した。
その結果、1)中国における商業システムの社会主義化は、都市・農村共に、建国初期、大躍進期、調整期、文化大革命期を通じて、ジグザグの過程を経ながらも、文化大革命期において、全国的にほぼ完了したこと、2)商業システムの市場経済化は、都市・農村共に、1978年以来一貫して全国ほぼ一律に進行し、競争原理の導入、個体戸経営の叢生、自由市場の発展、集団営・国営企業の改革などに特徴が見られること、3)農村部の商業活動は、建国初期までは、主として集市の形で行われていたが、社会主義計画経済期には供銷社(協同組合)がそれにとって代わったこと、4)しかしながら、改革開放以来、農村部では集市(自由市場)の復活が顕著で、いまや衣料品を中心に日常の必需品の主要な購入の場となっており、しかも市営業が農民の主要な兼業の場、あるいは農産物販売の場となっていること、5)農村部にも零細ではあるが個体戸商店が叢生しつつあることなど、興味深い事実が明らかになった。

Research Products

• [Publications] 石原 潤: "中国河南省登封市の地域変容,その1:集貿市場をめぐって" 日本地理学会発表要旨集. 53. (1998)
• [Publications] 石原潤・孫尚倹編: "河南省登封市の市場経済化と地域変容" 京都大学大学院文学研究科地理学教室, 210 (1998)
• [Publications] 石原潤: "現代中国の商業システム" 京都大学大学院文学研究科(科学研究費報告書), 61 (1998)