1997 Fiscal Year Annual Research Report
幕藩撰地誌書の編纂過程とその地誌学的特質に関する歴史地理学的研究
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08680170
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
五十嵐 勉 佐賀大学, 農学部, 助教授 (30202857)
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Keywords | 官撰地誌書 / 幕藩撰地誌書データベース / 新編会津風土記 / 大村郷村記 / 唐津拾風土記 / 丹邱邑誌 / 村絵図 |
Research Abstract |
本研究の目的は、幕府・諸藩において編纂れた官撰(それに準ずるものも含む)地誌書の編纂過程とその地誌学的叙述に関する歴史地理学的解明である。 まず、官撰地誌書の編纂時期や編纂過程の全国的傾向をみるために、刊本資料としての主要な官撰地誌書、および未刊行の関連資料の収集を行い、それらを遂次「幕藩撰地誌書調査票」に記入し、パーソナルコンピュータによる「幕藩撰地誌書データベース」を構築した。入力を終了した地誌書は約73点に及び、入力作業は継続中である。このデータベースから、編纂時期が文化・文政期に特に集中する傾向が析出され、領内からの書き上げ(差出し)や家臣・地方役人による悉皆調査(巡見・出役)によって統一的に編纂されたものに、記載様式や内容の点で優れたものが多いとが明らかとなった。また、その記載様式には会津・武蔵・相模等の幕府領で編纂れた地誌書を雛形とするなど地誌書相互の系譜関係が一部確認された。さらに、これらの地誌書が、郷村絵図などの官撰絵図の作成と対をなす場合も多く、ともに藩政(改革)の基本資料とされたことに大きな特色を見いだすことが出来る。 ついで、かかる領内からの差出し方式による地誌書編纂の事例として、会津藩の『新編会津風土記』と「地誌書上帳」の差出し文書類の記載内容等を比較検討し、情報の取捨選択の基準等に関わる地誌的叙述の特質を検討した。また、北部九州諸藩における地誌書の個別研究として、大村藩の『大村郷村記』、唐津藩の『唐津拾風土記』、および多久藩(佐賀藩支藩)の『丹邱邑誌』について比較検討した。特に、『唐津拾風土記』の記載内容から近世後期における唐津藩領の地域構造を分析した(第66回人文地理学会歴史地理部会にて発表、投稿準備中)。また、多久藩における『丹邱邑誌』の編纂と関わる村絵図の記載内容の比較検討から地誌書と村絵図における地誌的情報の表現法の相違について分析を継続中である(投稿準備中)。 このような、幕府・諸藩における地誌編纂事業は地理学的史意義の上でも特筆に値し、「幕藩撰地誌書データベース」を広く公開することにより、地誌書を用いた地域構造の解明に広く寄与する事が可能となるであろう。
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