1997 Fiscal Year Annual Research Report
中等理科教育における遺伝学領域の問題解決学習に関する認知発達論的研究
Project/Area Number |
08680266
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
藤田 剛志 千葉大学, 教育学部, 助教授 (90209057)
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Keywords | 問題解決 / 発達段階 / 文脈依存 / 遺伝 / 中等教育 / 理科 |
Research Abstract |
本研究では、生徒にとってなぜ遺伝学習が難しいのかという問題を、認知的な発達段階と遺伝問題(exercise)のタイプの違いという視点から考察したものである。 生徒の認知的発達段階を特定するために、Roadrangkaらによって開発されたGALT(Group Assessment of Logical Thinking)を用いた。遺伝問題は、StewartやKinnearらの先行研究に基づいて、生物学的な文脈における遺伝問題(単性雑種に関する問題)と日常的な文脈における遺伝問題を作成した。上記の調査問題を中学生231人(男118,女113)、高校生236人(男122、女110)に実施した。 GARTの正解数に基づいて、発達段階を特定したところ、具体的操作段階(正解数0〜4)は204人、移行期段階( 5〜7 )は162人、形式的操作段階(8〜12)は97人であった。発達段階ごとに、生物学的な遺伝問題(6点満点)の平均点について分散分析を行ったところ、1%水準で有意差がみられた(F(2,444)=6.36,p<.01)。多重比較の結果、具体的操作段階と形式的操作段階とに、5%水準で有意差がみられた。形式的操作段階の生徒の方が、生物学的な遺伝問題の得点が高かった。 同様に、日常的な遺伝問題(6点満点)においても、分散分析の結果、1%水準で有意差がみられた(F(2,446)=30.01.p<.01)。多重比較の結果、3段階それぞれに5%水準で有意差がみられた。発達段階が高いほど、平均点は高かった。 以上の結果から、遺伝の問題解決には、形式的論理的な操作能力が必要となることが明らかにされた。調査した中学3年生のうち、形式的操作段階に達していた生徒は、およそ40%であった。この点を考慮すると、遺伝は、やはり生徒にとって難しい教材であるといえる。
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