1996 Fiscal Year Annual Research Report
幼児の造形表現と会話における物語の展開に関する事例研究
Project/Area Number |
08680302
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Naruto University of Education |
Principal Investigator |
松本 健義 鳴門教育大学, 学校教育学部, 助教授 (90199878)
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Keywords | 幼児の造形 / 会話 / 物語 / 相互行為 / 造形行為 / 参与観察 / 相互行為分析 / 相互行為文脈 |
Research Abstract |
本研究は、幼児が自分の日常生活を語ることと、造形表現で空間表現を行うことが、相互にどのように関係して展開されるかを調査分析することを目的としている。これを以下の2つの観点から継続的に参与観察を進め、幼児と他者との相互行為分析をともに調査と分析を進めている。(1)幼児の造形(空間)表現と時間を物語ることとの相互依存的関係。(2)物語のもつ時間的な構成を幼児が造形表現の中で実現する際の、他者(保育者・友人等)との相互行為のはたす役割。 平成8年度は、鳴門教育大学学校教育学部附属幼稚園を研究協力機関とし、平成8年5月より平成9年1月まで週1回の参与観察を行った。観察では、幼稚園において幼児が遊びの一部として行う造形行為のひとまとまりを、それに伴う会話や相互行為とともにビデオに記録した。調査記録の分析では、会話、相互行為、造形行為の3項目についてそれを意味単位よりプロ化して相互行為分析をおこなった。 会話プロトは、命名、名指し、あいづち、反復、沈黙、介入について記述した。相互行為プロトは、差しだし、指さし、うなづき、視線の推移について記述した。造形行為は、素材を並べる、切る、接合する、混ぜる、身にまとう、持って身ぶるい描く等について記述した。 このうち特に視線の推移については、自他の視線の交叉、同一対象への視線、対象から他者への視線の移動、自他間での視線の回避に着目して、会話上の物語の成立と、造形表現の意味の成立とを媒介する相互行為として注目し抽出した。そして、視線が交叉した時点の以前と以後の会話、相互行為、造形行為が作り出す一連の相互行為文脈の連鎖をもとに、造形表現が他者と共同的に形成されていく要因について考察した。以上の調査分析から、物語の成立に伴う会話上での時間構成と、造形表現における意味の成立との関係について考察した。
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