1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08680411
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
世木 秀明 千葉工業大学, 工学部, 助教授 (60226636)
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Keywords | 音声知覚 / 視覚刺激 / 聴覚刺激 / Mcgurk効果 / 聴覚障害 |
Research Abstract |
本研究では、音声知覚に伴う視覚刺激の時間的な要因、年齢による差異、聴覚障害者と健聴者の差異などを明らかにするために、昨年度行った研究成果をもとに1)年齢による音声知覚時の視覚刺激の影響の差異についての検討、2)聴覚障害者と健聴者における音声知覚時の視覚刺激の影響の差異について検討を中心に研究を進めた。さらに、音声知覚に伴う視覚刺激の影響についてのモデル化の検討も行った。 本年度、健聴者のべ66人を対象に聴取実験を行い、以下の結果を得た。1)音声知覚時における年齢による視覚刺激の影響の差異に関する検討では、3歳から24歳成人までの被験者を対象に聴取実験を行い、この結果から、音声知覚時の視覚刺激(口形)の影響は5歳をすぎる頃から徐々に増加し9〜10歳(小学校4年生)になると成人とほぼ同様の影響を及ぼしていると考えられた。このことから、3〜4歳の幼児では成人に比べ視聴覚間の感覚統合能力が未発達であり、音声知覚において視覚情報の影響を受けにくく、聴覚からの情報を有意に利用して音声知覚を行っていることが示唆された。また、2)聴覚障害者と健聴者における音声知覚時の視覚刺激の影響の差異について基礎的な検討を行うために、疑似音声雑音を聴覚刺激に様々なレベルで付加することにより健聴者を模擬難聴とし聴取実験を行い検討した。聴取実験の結果、聴覚刺激とした音声信号レベルに対して付加雑音レベルが9dB小さい場合においても、雑音を付加しない場合よりも有意に視覚刺激を利用して音声知覚を行っていることが示唆された。この結果から、音声に付加した雑音レベルが音声知覚時における視覚刺激の影響に大きく関与していることが考えられた。このことは、聴覚障害者ではわずかに得られる聴覚情報に加え、非常に多くの視覚情報の手がかりを利用して音声知覚を行っていると考えられた。 先年度と本年度の研究の結果から、比較的に独立しながらも相互に影響しあう聴覚情報処理機構と視覚情報処理機構が存在し、これらを統合する高次の処理機構は、加齢と共に発達し、10歳程度でほぼ成人と同様になること、聴覚障害などで聴覚情報処理が充分に行えない場合には視覚情報処理機構が音声知覚に大きく関与していることが示唆された。
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Research Products
(1 results)