Research Abstract |
インターネットは,今日では,マルチメディア情報システムとして機能し,その応用は,通信というよりは,より放送的で,マスメディアの様相を呈してきた.このような環境下では,今までの文字やソフトウェアなどのデータ転送を中心としていたネットワークでは経験のない,新しい形の脅威が存在する.本研究では,そのような脅威のひとつである識閾(しきいき)下効果による脅威についての対策を考える.識閾下伝意は,その応用の是非はともかく,受信者は少なくともその存在を確認できる手段を与えられるべきである.これには検出機能が不可欠である.当該問題は,受信者側の受信した情報やオブジェクトについてのbeliefに基づく攻撃によるものであり,コンピュータウイルスやトロイの木馬攻撃などと同等の問題である.本研究では,これらの諸問題の解決方法とてらしあわせながら,画像処理と暗号化技術を用いて,対策を考えた. 平成8年度は,5月はじめに行なわれたIEEE Syomposium on Security and Privacyで本研究課題について簡単な発表を行なった際得られたフィードバックに基づいて,問題定義と,マルチメディアのセキュリティ分野における本研究課題の位置づけなどの研究を主に行なった.情報隠蔽(いんぺい)技術(steganography)の分野や,潜在通信路(sublimnal channel)など,これからの音声や画像を含むマルチメディア通信におけるセキュリティ問題を把握できたことは,本研究課題の特異性の認識に役立った.その成果は平成9年11月にカンヌ(仏)で開催争されたICCC“97で発表した. 平成9年度は,画像の基礎的な学習に終始した.さらに,インターネット環境における映像情報に識閾(しきいき)下メッセージ挿入などの手法とその対策について研究を進めた.対策モデルとしては,検出機能を受信者あるいは近くの代理エージェントに持たせるということにした. 平成10年度は,インターネットにおける動画による識閾下伝意の手法として標準化が進むMPEG2を使用し,動画に一部画像の挿入などを試みた.実験結果から識閾下伝意の検出について考察を行った.当初,検出については独自の画像処理のアルゴリズムの製作を行う予定であったが,画像の符合化および復号のより一般的で現実的なMPEG2を試験的に使用することで,画像挿入の現実的な手法が判明した.検出手法については,挿入手法からの考察により現在開発中である. 今後、本研究成果を元に検出機能開発し,その普遍化を試み,結果を論文誌などに発表して行きたい.また,対策モデルについては公証機関(Certification Authority)の利用もさらに検討して行きたい.
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