1996 Fiscal Year Annual Research Report
水ヒートパイプにおける凝縮部熱伝達の劣化現象の実験的解明
Project/Area Number |
08680517
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
神永 文人 茨城大学, 工学部, 教授 (80114015)
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Keywords | ヒートパイプ / 凝縮 / 非凝縮性ガス / エントレインメント |
Research Abstract |
本研究は、ヒートパイプ内の凝縮熱伝達について、特にその熱伝達率が水を作動流体とした時非常に小さくなる原因について研究したものである。そのため、凝縮部の熱伝達と凝縮部での除熱量を正確に測定できる実験装置を製作し各種パラメータを変化させて伝熱測定実験を行った。作動流体としては、水を主に用いたが、その他比較のため、フレオンとエタノールを使用した。またこの実験装置以外にも、管内での流動状態を観察するためのガラス製ヒートパイプを製作し可視化実験も行った。以下に今回の研究で得られた知見を示す。水を作動流体とすると従来の測定データで示されるように、ヒートパイプの熱設計で推奨されているヌッセルトの相関式よりかなり小さい凝縮熱伝達率となることが分かった。またこの原因として、エントレイン液滴による液膜厚さの増加と非凝縮性ガス(空気)の効果とを考え、実験的に検討を行った。エントレインについては可視化実験から、水の場合蒸気と液との密度比が大きいため多くの液体が凝縮部に移送されることが判明した。ただ、伝熱実験において凝縮部の温度分布を測定したところ、凝縮部下部のみが高く、上部は非凝縮(断熱)の様相で低いことが分かり、エントレインメントが劣化の主原因では無いとの結論を得た。非凝縮性ガスについては、管内の蒸気のガス分析を行った。その結果、空気が少量含まれており、完全に脱気することは困難であることが判明した。しかしこの空気の含有を考慮しても、凝縮熱伝達の劣化は説明出来ないことが示された。データを最整理し、また他研究者のデータも再検討した結果、フレオンやエタノールの実験においても低熱流束では同じ伝熱劣化が観察されることがわかり、液膜厚さの計算から、伝熱劣化の主な原因は、液膜厚さがある程度大きくならないと流下せず、結果としてそれが凝縮の伝熱抵抗となってためであることが結論として導かれた。
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