1996 Fiscal Year Annual Research Report
生態系に及ぼすトリチウムの影響(水素同位体交換の利用)
Project/Area Number |
08680535
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
今泉 洋 新潟大学, 工学部, 教授 (80126391)
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Keywords | Isotope exchange reaction / A^"-Mckay plot / Tritium / Gas-solid reaction / Functional group |
Research Abstract |
自然界のトリチウム(T)や原子力発電などで環境中に放出されたTは,水蒸気中のプロチウム(H)と入れ替わり、HTO分子となって行動することが多く,単量体(または高分子)中の官能基との間で同位体交換反応を起こし易い。この反応が生態中で起こると,内部被爆などの原因となることが危惧されており、この反応の難易性を種々の物質中の官能基について早急に調査し,将来予想される「T汚染増加」に向けた対策を講じることは重要である。そこで,種々の官能基におけるこの反応の起こり易さを定量的に明らかにすることを本研究の目的とした。 本年度は主に、固体物質中の各種官能基の反応性を明らかにするため,比放射能が6x10^5程度のHTO蒸気と各種官能基を持つ固体試料物質との間の水素同位体交換反応(T-for-H交換反応)を真空ラインを使って,温度を変えて観測した。得られた観測データを,以前提出したA^"-Mckayプロット法を使って解析した。さらに,原子団としての同位体交換反応(OT-for-OH交換反応)についても,陰イオン交換樹脂とHTO水とを使って観測した。 その結果,T-for-H交換反応からは,次のことなどが定量的に明らかとなった。 1.異なる二種の官能基を持つ物質の反応性を,その官能基ごとに求めることができる。 2.物質中のメチレン基が多いと,その物質の反応性は小さい。 3.A^"-Mckayプロット法を使うことで,異なる二種の官能基を持った脂肪族化合物の反応性を求めることができる。また,OT-for-OH交換反応からは,次のことなどが定量的に明らかとなった。 1.陰イオン交換樹脂とHTO水との間でOT-for-OH型の交換反応が起こる。 2.OT-for-OH交換反応が起こる程度は,強塩基性のものの方が弱塩基性のものよりも大きい。 3.OT-for-OH型の交換反応は,T-for-H型の交換反応よりも起こり難い。 さらに,本研究で行った手法や得られた結果やは,それぞれT汚染防止のための手段や基礎データになる。
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[Publications] 狩野直樹: "OT-for-OH交換反応を用いた陰イオン交換樹脂の反応性" RADIOISOTOPES. 45・10. 613-618 (1996)
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[Publications] Hiroshi Imaizumi: "Effect of the Number of Methylene Groups per Molecule on the Reactivity of Both Amino and Carboxyl Groups in Hydrogen-Isotope Exchange Reaction" Radiochimica Acta. (発表予定).