1996 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯マングローブ生態系を維持する物質分散機構の解明
Project/Area Number |
08680559
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
松田 義弘 東海大学, 海洋学部, 教授 (80056100)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金沢 延幸 新日本気象海洋(株), 数値解析部, 研究員
澤本 彰三 東海大学, 海洋研究所, 助教授 (90119678)
佐藤 義夫 東海大学, 海洋学部, 助教授 (70056315)
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Keywords | マングローブ / 物質分散 / 分散係数 / 形状抵抗 / 数値実験 / 粒子追跡 / 塩分回復 / 感潮河川 |
Research Abstract |
Riverine forest type(R型マンガル)のマングローブ域では、上げ潮で河川(creek)を遡上した海水は両岸の高さを超えるとマングローブ林(swamp)に氾濫する。その後下げ潮でswamp内の海水はcreekへ流出し、creekを流下してきた海水と合流して外海へと流出していく。swampへの氾濫水量はcreekの水量に比べて多く、海水の流動に乗って移動する物質(栄養塩、プランクトン、卵稚仔、マングローブ種子等)の分散形態は氾濫域を持たない感潮河川におけるものと大きく異なると思われるが、このような場での分散に関する知見は殆どない。 本研究ではR型マンガルにおける分散の実態と分散係数の大きさを知るために沖縄県西表島の前良川マンガルでの現地観測を行い、さらに物質分散に対してswamp内のマングローブの地上根や底面の凹凸がつくる流体抵抗の効果を検討するため、数値実験を行った。 集中降雨後の前良川マンガルの塩分回復過程を追跡することにより、海水混合の強さが河口側から上流側へと次第に小さくなっていくことが知られた。前良川マンガル全体としての分散係数(7〜10m^2/s)は氾濫域が無いとした場合よりも2桁大きく、swampの存在が分散に大きな影響を持つことが確認された。 平面2次元の潮汐流の場で粒子群を追跡した数値実験の結果、swampに氾濫してcreekに戻る粒子の動きとcreekを往復する粒子の動きの位相関係がswamp内の流体抵抗に依存して大きく変化するため、swampの抵抗係数が大きくなると共に分散係数は小さくなり、極小値を持った後に再び大きくなることが知られた。これは、swampにマングローブが生えていない場合も密集している場合も共に物質の分散が大きく、その中間の植生で分散は極小となることを意味し、R型マンガルの自然環境維持に対する興味ある示唆を与える。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 松田 義弘: "マングローブ沿岸水域の物理環境" 海の研究. 6・2. 1-23 (1997)
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[Publications] 黒川忠之・松田義弘・数井弘志: "マングローブ水域の物理過程(11)-分散係数の測定-" 1996年度日本海洋学会秋季大会講演要旨集. 219-220 (1996)
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[Publications] 金沢延幸・松田義弘: "R型マンガルにおける物質分散シミュレーション" 日本マングローブ協会96年次大会講演要旨集. 7-7 (1996)
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[Publications] 間木道政・松田義弘: "マングローブ林内の物質分散-海水流動の実態把握-" 日本マングローブ協会96年次大会講演要旨集. 8-8 (1996)